劇場公開日 2013年11月2日

「夢にしがみつく凡人たちの姿に共感しっ放し!」ばしゃ馬さんとビッグマウス 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5夢にしがみつく凡人たちの姿に共感しっ放し!

2014年5月13日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

笑える

悲しい

前に「地獄でなぜ悪い」のレビューでも書いたが、恥ずかしながら映画監督になりたいという夢を本気で抱いた事があり、同時に恥ずかしながら脚本の真似事をした事もあった。
なので本作は、非常に胸にチクチク突き刺さった。

シナリオコンクールに幾度も幾度も応募するも、一時選考すら通らない34歳の馬渕。
一度もシナリオを書いた事が無いくせに、他人のシナリオを酷評する自称天才・28歳の天童。
そんな二人がシナリオスクールで出会って…。

見ていて、二人共、まあイタイ。
馬渕は友人の結婚式での見栄を張ったある台詞に、あー言っちゃった…と思った。
天童のこの自信は何処から来る?
人によっては二人共、好かないだろう。
二人共、意地っ張りだけど、自分に才能が無い事を充分分かっている。
凡人のこそばゆい所を、吉田恵輔監督は、可笑しく切なく愛おしく、絶妙に突っつく。

脚本を書くのって、本当に難しい。
どういう展開にするか、どうシーンとシーンを繋げまとめるか、どんな台詞を喋らすか、展開や台詞にちゃんと意味はあるか、無駄な部分は無いか、間延びしてないか、テンポは良いか…あれやこれやと考える事がいっぱい。一応これでも、脚本の真似事をしていたので(笑)

脚本家として成功しているのはほんの一握り。
その中には、シナリオコンクールに出したら絶対落選する映画の脚本がごまんとある。
シナリオコンクールでは落選したものの、映像化したらひょっとしたら??…というゴミ箱に捨てられた脚本もごまんとあるに違いない。
この差は何なのだろう? プロという肩書きとアマである事の違い?
“才能”の境界線は不鮮明。

夢を叶える事は難しい。
それと同じくらい、一度抱いた夢を諦める事も難しい。
妥協して諦める時はいずれ必ずやって来る。しかしそれまで、格好悪くとも夢にしがみついたっていいじゃないか。
才能? そんなものはやってみなければ分からない。

監督が駆け出しの頃の自身をモデルにした馬渕を、麻生久美子が好演。個人的に思うに、彼女の代表作の一本に挙げられるだろう。
天童を関ジャニ∞の安田章大が演じ、見事な演技を披露する。

レンタルで気に入った作品は二度三度繰り返して見るのに、本作は、繰り返して見るにはちょっと勘弁だった。
あまりにも胸がチクチク痛かった。
だけど、とても心に残る作品だった!

近大