「痛々しい、苦々しい人生模様でしたが、どこか優しさも感じられる作風が心に沁みました」ばしゃ馬さんとビッグマウス スペランカーさんの映画レビュー(感想・評価)
痛々しい、苦々しい人生模様でしたが、どこか優しさも感じられる作風が心に沁みました
夢は一体いつ諦めればいいのか・・・。
小さい頃からそれほど大きな夢を抱いて生きてきた訳ではないので、物凄く心に刺さったと言うほどではないのですが、見せ方や役者の演技がホント素晴らしかったので、いつの間にか話にグイッと引き込まれ、いつの間にか思いっ切り共感している自分がそこにいました。
現実を知るまでは、きっと自分は出来る側の人間だと思い込んでいた節が自分にも若干あったりはしましたので、ビッグマウス君の痛々しい言動もどこか分かる気がしたし、現実を知ってからのばしゃ馬さんの諦めきれずしがみ付く様子もどこか分かるような気がしたし、まあとにかく痛々しい、苦々しい現実を描いた内容に、見ていてとても胸が苦しくなった作品でしたね。
考えてみれば夢が叶う人間なんてほんの一握り、そんなに夢が叶う人ばかりいたらそれはもはや夢として抱けませんから、当然その何千何万倍もの夢破れた人が存在するのは間違いない事実。
でも夢って一体どうやって、どの段階で諦めればいいのか、そのタイミングって結構難しいものだなとしみじみ・・・。
諦めなければいつか夢は叶う、努力はきっと報われる、そんなどこかのアイドルが言いそうな言葉も、現実と言う壁の前には非情にも跳ね返されるのが世の常と言うもので・・・劇中そこでもがき苦しむ様子がとにかく痛々しく描かれていたので、見ていて本当に辛くなってしまいました。
また麻生久美子の演技がとにかく秀逸でしたので、余計に感情移入させられました、まさしくばしゃ馬さんの呼び名にふさわしいばしゃ馬っぷりが、ホント痛々しくて泣けてきた・・・。
ただ、現実を知り挫折を味わってからの身の施し方には少しホッとさせられましたかね。
でもあくまで現実路線、単純にハッピーな方向には持っていかないところなんかは、一貫性があった気がして、清々しい気分にはなれないけど、こう言う映画もありだな、作品としてはいい作品だったなと素直に思えました。
人生と言うシナリオはこんなもんだ、でも人はまた小さな「目標」を見つけて生きていく、挫折があるから人は成長できるのかな、そして人の数だけシナリオは存在する・・・ってことでしょうかね。
しかしまあ各人のキャラ設定がホント秀逸な映画でした。
ビッグマウス君と言い、みち代の友人マツキヨさん言い、みち代の元カレ松尾君と言い(麻生久美子の胸揉めてちょっと羨ましい)、皆強さと弱さを持ち合わせていて、人間臭くて良かった、彼らが醸し出す人生劇場に思わず見入ってしまいましたよ。
それと関ジャニ安田の演技に最初はちょっと不安要素を抱きましたが、あのむかつき加減は終わってみればこれはこれとしてリアルで良かったかも、ビッグマウス君はこの先どうなるのかなぁ~。
まあ何にしても、現実を知った大人だからこそ分かる部分もあったりして、大いに共感できた映画でした。