「80~90年代の台湾映画史とともに自身の来歴を述懐する侯孝賢の人間味を伝える好企画」HHH:侯孝賢 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)
80~90年代の台湾映画史とともに自身の来歴を述懐する侯孝賢の人間味を伝える好企画
初期作品で描かれていた台湾の純朴な子供がそのまま大人になったかのような、変わらぬ童心と人懐こさを感じさせる侯孝賢の姿をとらえている。1997年に仏テレビ局が制作したドキュメンタリーを劇場公開用にデジタル修復したものだという。
聞き手のオリヴィエ・アサイヤス監督と通訳の女性を伴い、「非情城市」の九份といったロケ地を巡りながら、台湾ニューシネマの始まりと関わった映画人など、台湾の近年の映画史を振り返りつつ自身の映画作りも回顧する。侯孝賢本人による回想もあれば、脚本家や俳優らを交えて談笑する場面も。
たとえば茶店にアサイヤス監督らと入り、侯孝賢が自ら台湾式の茶芸(お茶を淹れる作法)でお茶をふるまう場面などは、彼の人間性がにじみ出ているようだ。あるいは、「憂鬱な楽園」に出演した俳優たちなど10人弱ほどで入ったカラオケボックスで、長渕剛の「乾杯」の中国語版を熱唱するラストには、日本人観客の多くがほっこりするのではなかろうか。
侯孝賢監督のファンはもちろん必見だが、同監督作や台湾ニューシネマの入門にも役立つ一本だ。
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