「トイレの花子さんより怖いもの」トイレの花子さん(1995) 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
トイレの花子さんより怖いもの
90年代の“怪談ブーム”。私の学校でも心霊写真だコックリさんだ宜保愛子だと話題になってたっけ。
そのブームに乗っかって作られた児童書を基にした“学園怪談映画”。
東宝=『学校の怪談』がシリーズ化されて人気を博した同時期(1995年)に松竹が製作したのが、最もポピュラーな“トイレの花子さん”。
トイレの花子さんの怪異が子供たちを襲う。そんな中で描かれる子供たちのひと夏の冒険、友情、成長…。
誰もが『学校の怪談』のようなジュブナイルホラーと思ったに違いない。
が、当時も今も初見だったらびっくりするだろう。
だって、ホラーじゃない!
…いや、これは語弊。ホラーはホラーなのだ。つまり、子供向けのジュブナイルホラーではないのだ。
いじめや殺人変質者の恐怖を描いたガチのホラー・サスペンス…!
地方都市のとある小学校。
学校周辺で子供ばかりを狙った殺人事件が発生。
また、学校内でも花子さんが出るトイレが噂されていた。
美少女優等生が転校。ある誤解から花子さん呼ばわりされ…。
誰もが見たい花子さんは存在が曖昧に。はっきり姿は見せず登場せず、トイレの電気の明暗や笑い声やクライマックスのテレパシーで存在を賑わす。
心霊と言うより本作では守護霊のように描かれ、トイレの花子さんの恐怖を見たかった人たち(特に子供たち)には大いなる期待外れ。
オバケより怖いのは言わずもがな。人間なのである。
学校は社会の縮図と言うが、その小さな社会で起こるいじめ、嫉妬、猜疑心、集団心理…。
これらがある意味、怖っ!
クラスの人気者、拓也(いわゆる風早)。転校して来たばかりの冴子(いわゆる爽子)にも親切。拓也に想いを寄せるクラスのボス的女子・加奈子(いわゆるくるみ)はあからさまに嫉妬。
花子さんが出ると言われるトイレを使っただけで花子さん呼ばわり。こういうの、学校ではよくあるね…。
学校内に何者かが侵入して飼育されているヤギを斬首。現場に落ちていた血塗れの鎌を冴子が拾ってしまった事から、さらにエスカレート。
クラスから完全孤立。冴子と親しくする者も同じ。
冴子と親しい拓也の妹・なつみもいじめを受けている。あるシーンのいじめ女子の「なつみ、おいで」にゾ~ッ…。
冴子となつみが話している時、階段踊り場の姿鏡に映ったこちらを睨んでくる生徒たちにこれまたゾ~ッ…。
遂には暴挙。冴子は花子さんか否か証明する為に、トイレに一夜閉じ込め。居なくなったら花子さん、朝まで居たら花子さんじゃない。クラス満場一致の民主主義的投票で決定。
こんなの今だったらワイドショーで取り上げられる超問題レベル。って言うか、冴子の親御さんは大丈夫なの…?
子供と言う勿れ。子供だからこそ逆に恐ろしい人間関係。
ショックで声が出せなくなった冴子。
僅かだが、味方も。なつみや拓也。
冴子と拓也が放課後、黒板に文字を書いて会話のやり取りをするシーンは、青春だなぁ…。
そんな拓也もある状況から冴子に猜疑心が芽生える。突き放すように。
クライマックスでは誤解が解けて冴子を助けに行くのだが、ちとここら辺の心境の変化が弱い。
トイレに閉じ込められた冴子を助けに行く拓也となつみ。
夜の学校に赴いたのは兄妹だけじゃなかった。
巷を騒がす殺人変質者も…。
演じるは、『半沢直樹』の机バンバン上司の緋田サン! こんな昔から怪演してたのか…!
ガラス越しに映る姿、効果音による不気味な声を上げて襲い来る様は、並みのホラーより怖いかも。もはやジュブナイルホラーに非ず、サイコホラー!
はてさて3人はトイレの花子さんの恐怖…じゃなくて、殺人変質者の魔の手から逃れる事が出来るのか…?
どの世代をターゲットにしたのか不明。
極め付けはラストシーンにやってくる。
また平穏な日常と学校生活が。誰も居なくなった教室で、拓也と冴子がキス。
トレンディードラマか!
まあ、青春ラブストーリーという事で(いいのか…?)。
寧ろ、メチャ若いトヨエツパパとメチャ若くて美人の大塚寧々先生の明らかに意識し合ってる関係こそ、どの世代ターゲット…?
VHS化はされたが、DVD化はされず、本作も幻の作品。
いつぞやWOWOWで放送したのを録画してBDに保存したもの。
見るのはチョー久しく、懐かしさもあって、それなりに楽しめたかな。
この令和時代だったら、どんなトイレの花子さんが登場するかな…?