七彩の虹
劇場公開日:1949年10月31日
解説
製作は「悲恋模様」につぐ陶山鉄「湯の町悲歌」(新東宝作品)の佃血秋の原案を鈴木兵吾が「恋の十三夜」についでの脚本「踊る龍宮城」についで佐々木康監督がメガフォンをとる。キャメラは「シミキンの忍術凸凹道中」の斎藤毅である。出演は市川猿之助が「阿片戦争」以来七年振りでスクリーンに出演しているほか、市川段四郎は映画初出演「彼女は答える」の山内明「悲恋模様」の河村黎吉「真昼の円舞曲」の坪内美子「愁海棠」「薔薇はなぜ紅い」の柳永二郎「毒薔薇」の入江たか子等に新人西條鮎子がデヴューする。
1949年製作/92分/日本
配給:松竹
劇場公開日:1949年10月31日
ストーリー
月島の裏町で俥夫を営む村井善三の一人息子の茂が男手一つで生長して、今日は晴れの新聞社入りを祝う酒宴の最中だった。そこへ料亭の「春日」の客から呼び出しがあって善三は相棒の喜八と出かけて行った。その客というのが偶然にもかつて茂と善三をすてて去った美也子で、いまは政界の大立者筧夫人として栄華をほしいままにしている姿だった。馳け出し記者として初の出社をした茂は、立花部長と共に実母とも知らず筧邸に招待されたのだ。それを知った善三は何故か不機嫌だった。大正末期のこと--富豪島村家の令嬢美也子は書生の善三と恋仲となり、舞踏会の夜二人は手をとり会って失踪したのだった。やがて茂が生れたが美也子は貧乏生活にたえられず乳児の茂をおいて善三のもとを去ってしまった。母に去られた茂を抱えて善三は線路工夫や俥ひきとなって各地を流れていった--あれから二十年余、生長した茂こいしさに美也子は接近しようとしていたのである。善三は茂の筧邸の出入を禁じた。茂は隣の喜八の娘志津江と相愛の仲だったが、何も知らぬ美也子は吾が子のために立花部長の妹桐江を茂の嫁にとひそかに考えていた。ある日立花部長によばれた茂は特種記事、日本繊維汚職事件を担当させられた。そのバックには筧修介が大きく浮び上っているのだ。茂は早速美也子を訪れて、特種を提供してもらった。翌日の新聞には茂の書いた記事が大見出しで出された。得意な茂は喜八から筧夫人が実母であることをきかされ知らなかったとはいえ、その不孝をはじ辞表を提出したが立花部長にさとされ思い止ったのだ。その茂に筧夫人からというよび出しがかかったが意外にも筧の秘書が記事取消のための買収手段であった茂がかん然と席をたったとき筧の指令で暴力団が配置されていた。客をのせて「春日」までやってきた善三はふと茂の危険を感じて中へ飛び込んだ。茂にむけたジャックナイフは善三の腹に突きささった。病院にかつぎ込まれた善三は一命はとり止めたが、筧夫人の消息が知れなかった。その善三のまくら元に筧家を去った美也子が訪れた。すでに死を決していた美也子は善三にわびてさびしくさっていこうとしていた。うらんでもうらみきれない筧だが茂にとってはやはりかけがえのない母なのだ。善三の許しを乞って霧の彼方にたたずむ母を迎えに茂はとんでいった。