海のGメン 玄海灘の狼
劇場公開日:1950年4月29日
解説
「群狼」以来久し振りの志村敏夫が脚本を執筆し、彼自身が演出を担当する。撮影は「帰国」の山崎一雄。出演者は、「人生選手」の藤田進、「妻の部屋」の月丘夢路「母の調べ」の月丘千秋、「甲賀屋敷」の黒川弥太郎、「人生選手」の堀雄二、「無頼漢長兵衞」の河津清三郎、「流星」の中村彰等である。
1950年製作/105分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1950年4月29日
ストーリー
厳原海上保安部の巡視艇まなづるが基地の港へ、密漁船を曳航して入って来る。港には保安部の事務員澄子が、許婚である艇長の高木を待っている。仲人を引き受けた機関長の梶原が愛用のサルを肩に乗っけているのが見える。ちょうどその時連絡船も入って来た。連絡船のタップから降りて来る都会風の若い女に澄子の眼が止まった。「アッ!加寿子姉さんだ」加寿子は街のギャング勝田の姐御で、三年目に家出し、泥沼の生活を悔い、勝田の許から逃げて故郷に帰って来たのだった。頑固だった父仙太郎も、こんな加寿子を快く迎えた。彼女の許婚者であった謙三は今も変わらぬ愛情を抱き、仙太郎の持ち船日の出丸に乗り組んでいた。折角心の傷痕も直って、落ち着いて来た加寿子は、ある日はからずも勝田の乾分、松井一味に出逢ってしまった。彼等は密輸物資を港外のM及びT島に隠匿し勝田の船を待っているがその船が博多で故障したので悪計を働かせ、勝田の船の代わりに日の出丸を選び、加寿子に腕に入れ墨のある彼女の者の行動を暴露すると脅迫し、彼女にこの仕事に一枚加われと要求するのだった。謙三はこれを立ち聞きしていた。彼は愛する加寿子のために彼等の申し入れを承諾した。嵐の夜保安部に漁船遭難の報が入った。岡田保安部長の命でまなづるは出航し、決死の救助作業でまなづるも一時は危機に瀕したが無事に帰港した。人命救助も保安部の重要な任務の一つである。この朝謙三は秘密を抱いて日の出丸を出航させたが、彼は祭の晩になっても帰って来なかった。祭で皆が平和に酔い、はしゃいでいる時、謙三が人事不省になって波間に漂っていたという報せが保安部に入った。これより先、密輸船の実態調査の命を受けてこの土地にやって来た辣腕記者伊村は、松井達の挙動に不審を抱き、岡田と打ち合わせて現場をおさえるため密輸取引の一味を装って彼等の中に潜入していた。M・T島にやって来た伊村はそこにひっそり繋がれている日の出丸を見た。早速彼は折から沖を航行している巡視船に合図を送った。その頃加寿子の告白によって一切を知った保安部は、武装警官の助力を得て、全巡視艇を島へ急行させていた。伊村を射撃して逃走する日の出丸。負傷した伊村を収容して突進するまなづる。それを追う巡視艇、夕闇の中で機関銃弾が飛び散った。機関長梶原は弾に当たって倒れた。再び平和にかえった厳原港から新しい待望の監視船が行く。まなづるからは、その船で送られていく梶原機関長に、甲板から花束を投げて黙とうをささけでいる高木と澄子の姿が見える。遠く去って行く新造船では伊村が手を振っている。