劇場公開日 1946年12月31日

「多羅尾伴内シリーズ第一作目」七つの顔 野川新栄さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5多羅尾伴内シリーズ第一作目

2020年6月29日
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鑑賞方法:DVD/BD

楽しい

単純

萌える

七つの顔の男ですよ
あるときは多羅尾伴内
あるときは奇術師
あるときは老看守
あるときは新聞記者
またあるときは手相見
片目の運転手
しかして実態は
藤村大造だ

この頃は「愛と正義の使徒」という台詞がない

多羅尾伴内シリーズを初めて観たのは片岡千恵蔵多羅尾伴内シリーズ最終作『七つの顔の男だぜ』
15年前渋谷TSUTAYAで借りた
この作品は10年前地元のブックオフで売っていたのでとても安いこともあり迷わず買った

昭和21年の作品
戦後の焼け野原から早くも映画を制作した逞しさに感動する
GHQが「チャンバラは軍国主義」というわけのわからないレッテル貼りをしたせいで現代劇をするほかなくなった山の御大こと剣劇大スター片岡千恵蔵
当時は評論家連中からは荒唐無稽だの稚拙だの揶揄されたそうだ
だが本当に駄作なら片岡主演で多羅尾伴内シリーズが大映で4作東映で7作も制作されるはずがない
当時の大衆娯楽No. 1は映画に他ない
一服の清涼剤
心の日曜日
痛快活劇
芸術も演劇論もクソくらえ
片岡千恵蔵が出てくるだけで拍手喝采
戦後落ち込む国民を元気づけたカンフル剤
変装する意味がない?面白いじゃん
キューティーハニーも方正のあれも元ネタはこれ

でもやっぱり片岡千恵蔵は拳銃より刀
時代劇俳優ならやっぱり殺陣
銃撃戦は美しくない

映画会社のためなら映画ファンのためなら決して華やかな役じゃなくても三枚目でも泥臭い役でも脇役でも演じきるのが俳優片岡千恵蔵
そこが北大路欣也の父であり二大剣劇大スターの1人市川右太衛門との大きな違いである
僕は子供の頃から片岡千恵蔵のほうが断然好きだ

友情出演なのかこれまた時代劇大物俳優月形龍之介が真犯人にはめられる役を演じる
昭和30年代はあの憎たらしい独特の喋り方で悪役や黄門様や大久保彦左衛門などを演じた月形龍之介
だが昭和21年当時は声と喋り方が全然違う
現代劇なのに時代劇のような喋り方はおかしいからこういう芝居になったのだろう
本当はこういう声なのかもしれないな

我は白百合を愛す
愛するがゆえにその花の白さに心慄き
その花のほのかな匂いに心痛め
おもて背ける

ご機嫌よう

野川新栄