「家族経営と金と不倫」妻の心 文字読みさんの映画レビュー(感想・評価)
家族経営と金と不倫
1956年。成瀬巳喜男監督。地元では大きな薬問屋の内実は苦しく、若い旦那と妻は母親が不服であることを承知で喫茶店を始めようとしている。金策や料理の準備などで忙しくなっていく中、家を飛び出していた長男とその家族がふらりとやってきていついてしまう。
構えだけは大きい店舗兼自宅のなかで右往左往する人々。家族経営の行き詰まりと若い夫婦の苦闘。そしてなんといっても不倫未遂。雨宿りという特別な時間のなかで、しかし思い切れずに未遂に終わる。8年後、似たような家族経営の商店を舞台に、思い切ってしまった男女の不倫が「乱れる」で描かれることになるだろう。二作を比べた時の異同に感動します。どちらも複雑な感情の機微を複雑なまま描くすばらしい作品。
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