道(1956)
劇場公開日:1956年4月25日
解説
「高校卒業前後」の須崎勝弥、「花ひらく(1955)」の魚住大二、藤原杉雄、新人の胡桃沢元の四人が共同で脚本を書き、「花ひらく(1955)」のコンビ藤原杉雄、仲沢半次郎がそれぞれ監督、撮影を担当。「家」の問題と取組み、それぞれの世代の生き方にメスを加えようという新世紀映画と山王クラブの共同作品。主な出演者は、「女房族は訴える」の佐野周二、「浅太郎鴉」の水戸光子、「隠密七生記(1956)」の島崎雪子、「雪崩(1956)」の木村功、「たぬき」の宮城千賀子、新人の田中稔子など。
1956年製作/94分/日本
配給:独立映画
劇場公開日:1956年4月25日
ストーリー
矢部家には、停年近い官吏である主人の謙介、妻喜代、会社勤めの長女節子、大学受験を目前に控えた長男弘志、お転婆女学生の富子、それにもう一人、喜代の父で考古学に夢中な修平老人がいる。喜代は不如意な家計を切りまわしながら、弘志が東大に合格することと、節子に良縁が見つかることだけを生きがいにしている。それは大した学歴も家柄もない良人が果さなかったものを、子供たちの上に実現させようとする彼女の夢であった。喜代は弘志を東大に合格させるためならば、他のすべての人は犠牲になるべきだとまで考えている。だから、修平老人が好きな考古学の話を弘志にすることも、受験勉強の妨げになるといって許さない。一方、彼女は羽振りのよい旧友の縁故をたよって、節子の嫁入り先を見つけようとあせっていた。こんな母の態度が、子供たちの反感を買わないはずはなかった。弘志は公園の茶屋の娘静枝に友情以上のものを感じ、次第に接近して行くが、それを知った喜代は、慌てて二人の仲を裂こうとした。同じころ節子が浅井という男の子を宿し、中絶手術を受けたことが判明した。こうした成行をいつも温い眼で見、かつ相談にのっていたのは、修平老人と謙作である。弘志が、静子のことを悪しざまに罵られた憤まんから盛り場を歩く中、不良少年とケンカをして、警察へつれて行かれた。その夜、修平老人は心配のあまり弘志を探しに出かけ、暗闇で足をすべらして怪我をした。喜代も自分の考えが頑なであったのをさとり、矢部家には再び明るい空気が流れ込んで来た。節子も毎朝往き合う、快活なガス会社のセールスマン相川を、未来の良人に決めたらしい様子である。