うず潮(1952)
劇場公開日:1952年11月6日
解説
故林芙美子の毎日新聞連載小説を、「父帰る」の長瀬喜伴が脚色し、「彼を殺すな」の原研吉が監督した文芸映画。撮影は「緑の風」の森田俊保。月丘夢路が帰朝後初の出演をする他、「夏子の冒険」の若原雅夫、「坊ちゃん重役」の佐田啓二、「佐渡ケ島悲歌」の三宅邦子、「柳生の兄弟」の草間百合子、「お茶漬の味」の柳永二郎等が出演。またSKDの野添元子がこの作品でデヴューする。
1952年製作/83分/日本
配給:松竹
劇場公開日:1952年11月6日
ストーリー
戦争未亡人高浜千代子と小谷仙子は生活の道を拓くために上京した。彼女らの前に現れた千代子の兄の知人、杉本晃吉の男らしい物腰は仙子の心を惹き、彼に接近するための努力を重ねさせたが、晃吉は笑って取合おうとしなかった。彼の心は、むしろ千代子の上に傾いているのだった。当の千代子は愛児悠一を谷村女史の経営する保育園に預け、料亭「銀峰」の女中に住みこんだが、主人雄作の露骨な野心が彼女の日々を痛苦なものとした。ついに耐えかねて晃吉の家へのがれた千代子は、つもる精神的疲労からフラフラと倒れてしまった。甲斐甲斐しくいたわる晃吉の口から熱情に充ちた求愛の言葉がささやかれたが、亡夫の想い出と子供への愛情にだけ生きる彼女は、それをも振り切り、外に飛び出した。「銀峰」の勤め先は主人との仲を誤解したその女房の怒りによって、すでに閉ざされていた。消息を絶った千代子を晃吉がやっと探し当てた時は、彼女は病床に伏していた。晃吉の切々の求愛を、千代子は重ねて拒んだが、やがて彼の好意による就職口を得て、悠一も手許に引取り、落着いた朝夕を迎えるようになってみると、頑なその心もひらいた。亡夫への感傷的な追慕を断つべく、数々の遺品を整理する千代子の顔はいきいきと輝いていた。