「殺しの舞台は希望を胸に抱いた金の卵が降り立つ60年前の上野駅! 徹底的に若者をスポイルする反社の魔手にオジさん精鋭刑事が挑むリアリズム!!」七人の刑事 終着駅の女 O次郎(平日はサラリーマン、休日はアマチュア劇団員)さんの映画レビュー(感想・評価)
殺しの舞台は希望を胸に抱いた金の卵が降り立つ60年前の上野駅! 徹底的に若者をスポイルする反社の魔手にオジさん精鋭刑事が挑むリアリズム!!
主役の刑事たちよりもあくまで事件主体というスタンスが、主要人物の個性が強くてナンボの現行の刑事ドラマと真逆のアプローチのため、のめり込みにくい部分は正直有りましたが、一方で当時の風俗や社会問題、あるいは警察と反社との対立具合が垣間見られ、今現在と似て非なる若者の空疎さが身に染みる脚本はなんともユニークでした。非常に地道で地味な捜査シーンの連続も今の世に於いては新鮮そのものです。
というわけで、実に地道に一つ一つ手掛かりを見つけて当たっていき、新しい証言が出る度に裏を取り、逐次捜査本部で集まって話し合い、少しずつ少しずつ真犯人に近づいていきます。
途中で同時多発的に捜査が劇的展開したり、容疑者が消されて新たな問題が発生したり、あるいは犯人グループの悪巧みの場に刑事が居合わせたりといった展開の盛り上げ用のミラクルや緩急の付いたアクションは見られません。
それを退屈と言ってしまえばそうなのですが、終始テンポが良くあるいはスピーディーで観客の興をそそるように矢継ぎ早に展開される過剰にドラマ的な現代の刑事ドラマに比べ、テレビ黎明期に於けるコマーシャライズされていない事件ドラマの妙味が詰まっていると考えれば非常に意義深いものです。"ドラマドラマしていない事件""ドラマドラマしていない刑事"とでも評すればいいでしょうか。
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