武器なき戦ひ(1934)

解説

「私と女王様」「黒騎士」のコンラート・ファイトが主演する映画で、リオン・フォイヒトワンガー作の同名小説を映画化したものである。「生ける屍」「肉体の呼ぶ声」のドロシー・ファーナムが改作し、A・R・ローリンソンが脚色して台詞を書き加え、監督には「都会の幻想」「恋愛運動場」のロウター・メンディスが当たり、バーナード・ノウルズが撮影した。助演者には「婦人に御給仕」「豪華船」のベニタ・ヒューム、「南欧横断列車510」のフランク・ヴォスパー及びセドリック・ハードウィック、「空襲と毒瓦欺」のジェラルド・デュモリエ及びエヴァ・ムーア、新人パメラ・オストラー、ジョーン・モード、ポール・グレーツ等である。

1934年製作/イギリス
原題または英題:Power Jew Suss

ストーリー

ジュスはドイツ、オランダを渡り歩く旅役者の子として成長した。もって生まれた才気とユダヤ人らしからぬ美貌はジュスをパラチン領の大蔵大臣兼陸軍大佐にまで引き上げた。ジュスにとって何よりも得なければならないのは権力であった。虐げられた民族の夢想!そうだ、ジュスはそのために生涯を犠牲にしても悔いないであろう。先ず権力を得なければならない。自らユダヤ民族の防壁たるために。その頃ジュスにとって一つの機会が與えられた。それはウルテンベルクの領主の従弟カール・アレキサンダーの知遇を得たことだった。やがて領主とその嗣子の急死はアレキサンダーを領主の位につかせた。その寵臣ジュスが重く用いられたのは云うまでもない。ジュスの野望の一半は達せられた。国会は彼の手に踊り、貴族も、大臣も、キリスト教の司教ですらもこの忌々しい一ユダヤ人の前に膝まづかねばならなかった。しかし権力はジュスにとって悲劇だった。彼が心から愛した司教の娘マグダレンが色好みのアレキサンダーに望まれたとき、彼はたった一つの愛情さえも敢えて棄てたのであった。けれど、ジュスにとってはまだ希望があり秘められた愛情がある。それは誰も知らない娘のナエミのことだった。十五歳になった美しいナエミは父の留守の時、領主アレキサンダーに襲われた。少女は死を以て領主の毒牙を逃れた。ジュスの野望はその時以来領主に対する憤怒と復讐に代わった。しかもジュスはその時母親から一つの秘密を聴かされた。それによると彼はユダヤ人ではなく、立派なキリスト教徒の元帥の息子だったというのである。何のために彼は今日まで、権力のために骨を削ぐ戦いまでしぬいて来たのであろうか。彼は黙っていた。ジュスはユダヤ人だ。ユダヤ人であるジュスが今日の地位に上りつめてこそ彼の生き甲斐があるのだ。ジュスの復讐はやがてカール・アレキサンダーの悶死となった。復讐はなった。併し領主の死はジュスの終焉を意味した。キリスト教徒の嘲笑とユダヤ教徒の悲しい祈りのうちにジュスは絞首台へ曳かれて行くのであった。

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