「おフランスの人生観。」とらんぷ譚 bloodtrailさんの映画レビュー(感想・評価)
おフランスの人生観。
広島市映像文化ライブラリで。
6:4の画面で鑑賞。
1931年にレジオンドヌール勲章を授与されている、フランスを代表する劇作家・映画監督、サシャ・ギドリの4本目の監督作は、1936年の作品。トーキーで「トランプものがたり」と読ませています。
作家性の高さで知られているギドリらしい「フランス文学」を感じさせる、名脚本だった。
フランスの片田舎に住む12歳の少年ルイは12人の大家族。両親と最初の妻との間に出来た三人の子、今の妻の子四人、二人の妻の母親二人に聾唖の叔父。これが叔父が採って来た毒キノコを食して11人が死亡。最初の数分の出来事。
ルイは母親の兄弟に引き取られるが、直ぐに家を出てレストランのボーイ。その後ホテルのボーイ。ここで知り合ったロシアとルーマニアのハーフ美男子から、パリを訪れるニコライ2世への爆弾テロに引き摺り込まれそうになりますが、左手で書いた密告文書を警察に送り、難を逃れます。
映画のタッチは凄まじく軽くコミカル。かつテンポ早いです。置いてけぼりになりそうな位。
ルイはモナコに行き帰化。カジノのディーラーに。そこからは、フランス政府による帰化取り消し、徴兵と出兵、帰還。再びモナコで、泥棒彼女と愛し合って一回だけのスティング。 別の美女と組んでルーレットイカサマを企てるが失敗。トランプイカサマの道へ進んで財を成す。
カジノで戦地での命の恩人と再会するが、その恩人からギャンブルの味を教えられる。カジノでのイカサマとギャンブルは違うところがミソ。イカサマで築いた財産も屋敷もギャンブルで手放し。今は、その屋敷の前のカフェで回顧録を書いているルイ。
そのルイに屋敷への侵入を持ちかける、落ちぶれた老伯爵夫人に、いまの身分では出来ない。俺は刑事だ。で、FIN。
実像だけが勝負のトーキー。この内容で90分弱の詰め込み様ですから、恐ろしく高密度です。しかもフランス戯曲的な語りには集中力が必要。全く気を緩める時間はありません。大事件もケ・セラ・セラでトントン運ぶスピード感。ウィットとユーモアで埋め尽くされた語り。フランスがフランスである、いや、フランスはずっと前からフランスだったって事を証明する、まさに名品でした。
物凄く好き。叙勲に値するよ、これは。確かに。
良かった。とーーーーっても。
今年はフランスのレジェンド二人(マルケルとギドリ)の作品が立て続けに見れて、本当に幸せです。