地中海夫人

劇場公開日:

解説

脚本家から監督に転じ、ロンドン・フィルム傘下で独立プロを主宰するアンソニー・キミンズの製作・監督したコメディ、一九五三年作品。劇作家アレック・コッペルのオリジナル・ストーリイをコッペル自身と「悲愁(1946)」のニコラス・フィップスが脚色した。撮影はテッド・スケイフ、音楽は「超音ジェット機」のマルコム・アーノルド、指揮は「エヴェレスト征服」のミューア・マシーソンの担当。主演は「オリヴァ・ツイスト」のアレック・ギネス、「極楽ホテル」のイヴォンヌ・デ・カーロ、「逢びき」のセリア・ジョンソンで、チャールズ・ゴルドナー(「砂漠の決闘」)、マイルス・マレスン(「黄金の篭」)、ビル・フレイザー、ピーター・ブル、脚色者ニコラス・フィップスらが助演する。

1953年製作/イギリス
原題または英題:The Captain's Paradise
配給:東和
劇場公開日:1954年3月

ストーリー

ジブラルタルとモロッコのカリクの間を通う小さな旅客船の船長ヘンリイ(アレック・ギネス)はもう五十近いのに、まだ人生最大の幸福を追いつづけていた。彼苦心の創作になる楽園は、硬軟両面を二人の女性に分ち求め、一人はカリクに、一人はジブラルタルにおき、お互に絶体秘密で二人の間を往復することだった。カリクには若い混血の踊り子ニタ(イヴォンヌ・デ・カーロ)がおり、ヘンリイは夜通し彼女と飲んで踊り明かすのが常であった。一方ジブラルタルには、世話女房型のモウド(セリア・ジョンソン)が優しく彼を迎え、彼は大変きちんとした生活を送った。こうして万事うまく運び、ヘンリイは幸福に酔ったが、あるとき、モウドが無断でカリクを訪れ、偶然ニタと顔を合わせて仲良しになってしまった。そうとは知らぬヘンリイは危く二人の前へ姿を現わそうとして、突磋の機転で難を免れた。モオドはやがて母親となりヘンリイの幸福は一そう安定したが、子供たちが学校へ行くころになって、次第に異変の兆が見えて来た。ニタは台所仕事に精を出しはじめ、逆にモウドは従兄のボブを連れてキャバレーで踊りまくった。ヘンリイはニタにもう二度と台所仕事をしないことを、モウドには二度と踊りに行かないことを約束させて、一応おさめたが--。あるときヘンリイはニタから突然わかれ話をつきつけられた。彼女は、ヘンリイと親しいタクシーの運転手アブサロムと地道な結婚生活に入ると云った。ところがアブサロムは、ニタとヘンリイがぐるになって自分をだましているのだと誤解し、ニタと大喧嘩のあげくピストル沙汰になった。ジブラルタルに行ったヘンリイは、ここでもモウドから別れ話を云い出され、彼女はボブとイギリスヘ駆け落ちした。彼の幸福はくずれ去り、財産をモウドに譲り、ニタのアブサロム殺害の罪をかわりに背負って、銃殺されることになった。兵士たちの銃が一斉に火を吐いた。だが、ヘンリイは死ななかった。この期におよんでもやはり彼らしい手をうっていたのだ。

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