「ルビッチ作品を更に観ないではいられない!」私の殺した男 KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)
ルビッチ作品を更に観ないではいられない!
エルンスト・ルビッチ監督で観たのは
「エノチカ」「天国は待ってくれる」
のユーモア優先の作品ばかりだったが、
この「私の殺した男」は
短い上映時間ながらも、
一転して(こちらの方が先ですが)
シリアス優先で深い内容の映画だった。
彼が殺した男の両親が、
勘違いして優しく接してくるシーンでは、
どうして罪を告白しない、
このままでは後でより大きな問題に発展
しかねないし、十字架が更に重くなる
ではないかと声を上げたくなったが、
これがラストシーンへの伏線だったことに、
この瞬間は気付かなかった。
彼の、殺した男の家族と許嫁への登場は、
家族の意識に大きな変化をもたらし、
特に父親の相手国の個人や国民へ
向かう憎しみが間違いだった
との認識にまで導いた。
これも家族の彼への誤解の結果ではあるが、
しかし、勘違いながらも相手への
優しい想いがあれば、お互いの障害を排し
平和をもたらすとの教訓にも思える。
ラストシーン、殺した男の許嫁に諭されて、
御両親の意向に添う決断をするが、
告白と許しを請う想いを封印して
己を捨て他人のために生きるという、
それが彼なりの懺悔であると理解し
別の意味での重い十字架を背負った瞬間
だったのだろう。
こんな素晴らしい映画を上回る作品が
他にあるのか、まだまだルビッチ探索
が続いてしまいそうだ。
追記
レンタルビデオの期間内に再度鑑賞。
最初の鑑賞では認識不足だったエピソード
の理解も進み、より一層涙腺が緩みました。
次の大戦を予感しつつも、
人類の融和を期待するルビッチ監督の想い
に多大な感動を覚え、
星を更に加え
🌟🌟🌟🌟🌟に変更させて頂きました。
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