ジェニイの一生
解説
「アメリカの悲劇」の作者セオドア・ドライザー原作の小説を映画化したもので「ブロンド・ヴィナス」のS・K・ローレンと「謎の真空管」のフランク・パートスが共同して改作し、「お蝶夫人」「七月の肌着」の共同脚色者ジョセフィン・ラヴェットとジョセフ・モンキュア・マーチが共同脚色し、「舗道」「お蝶夫人」と同じくマリオン・ガーリングが監督し、シルヴィア・シドニーが主演するもの。助演者は「民衆の敵」「街の狼」のドナルド・クック、「リリオム」「鉄血士官校」のH・B・ワーナー、「火の翼」「狼火」のメアリー・アスター、「戦慄街」「放送室の殺人」のエドワード・アーノルドが主なるもので、ルイズ・カーター、ドロシー・リベーア、その他が助演している。撮影はレオン・シャムロイの担当。
1933年製作/アメリカ
原題または英題:Jennie Gerhardt
ストーリー
ジェニイ・ゲルハルトは貧しい一家の生計を助けるため母と共にあるホテルにお手伝い奉公をして働いていた。そのホテルにはブランダーという上院議員が泊まっていたが、彼はジェニイの美しさと優しい気質に心を動かされ、ついにゲルハルト一家に経済的援助を与える様になった。ジェニイの父ウィリアムスは頑固一徹な男で、娘とブランダーの噂が近隣の人たちの口の端にのぼっているのを知ると、断然娘にブランダーとの交際を禁じてしまった。だが、ジェニイの弟が石炭を盗んで警察にあげられた時、彼女は秘かにブランダーを訪れて弟の釈放に尽力されたいと懇願した。上院議員の口利きで弟は釈放されたが、恩を義理に迫られてジェニイはついにその夜ブランダーと共に過ごしてしまった。しかしブランダーの気持ちは一時の浮気心ではなかったので、ジェニイと結婚の約束をしてワシントンへ赴いたが、その帰途汽車が転覆して不慮の死を遂げてしまった。彼の死でジェニイとの関係を知った父ウィリアムは頑固一徹娘を放逐した。ジェニイは下宿屋で身二つになり、ルイズ・ケインという金持ちの婦人の邸に奉公をすることとなった。ルイズにはレスターという弟があった。彼はレディーという婚約者のある身で美しいジェニイに想いを寄せた。シカゴである商会を経営することとなった時も、彼はレディーとの結婚を拒絶してジェニイを伴ってシカゴへ行った。かくして幸福な数年が過ぎた。ジェニイにとってもレスターの愛こそ生まれて初めて知った尊い恋だったのだ。しかし、それも長くは続かなかった。レスターは父親からジェニイを諦めなければ財産を譲らぬという宣告を受けた。レスターは富よりも愛を選んだ事は勿論だった。彼がジェニイに結婚を申し込もうとした時、彼女が持っていた人形からジェニイに子供があることがわかり、驚きと怒りに一時身を去就に迷ったが、愛する彼女を忘れ難く、さりとて子供のことを考えると結婚する気もなく、兎も角もジェニイを伴って欧州に旅立った。レスターは財産を失ったことをジェニイに知らせなかったが、たまたまレディーが彼女に凡て話したので、ジェニイはレスターの身を思い独り米国へ帰った。レスターと別れてからのジェニイは愛児ヴェスタの成長と愛するレスターの出世を心の慰めに、静かな生活を送っていた。ところがヴェスタは病で倒れ、急報でレスターが駆けつけた時には既に絶命していた。久しぶりに会い得た二人は変わらぬ愛を感じ合ったが、今は既に実業界政界の大立者であるレスターはジェニイの懐に飛び込んで行くわけにはいかなかった。ジェニイがブランダーを知った時から数えて28年目の一日レスターは瀕死の病床に横たわっていた。急を知って宙を飛んできたジェニイに、レスターは自分が一生の中で心から愛した女は彼女一人であることを告げ、愛を完うするために彼女と結婚する勇気の無かった自分の不甲斐無さを悔いつつ、黄泉の客となった。ジェニイは涙に濡れながらも、何時までも何時までも愛人のむくろを固く抱きしめていたのである。
スタッフ・キャスト
- 監督
- マリオン・ゲーリング
- 脚色
- S・K・ローレン
- フランク・パートス
- ジョセフィン・ラベット
- ジョセフ・モンキュア・マーチ
- 原作
- セオドア・ドライサー
- 撮影
- レオン・シャムロイ