劇場公開日 1991年11月2日

「正気の沙汰ではない」真実の瞬間(とき) 根岸 圭一さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0正気の沙汰ではない

2024年9月27日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

 赤狩りというテーマを元に、リアリティある描写がされていた点はよかった。共産主義者という冤罪疑惑を回避するために仲間を売ることを求められる。そしてそれが人間関係の破綻にまで追い込む赤狩りは、正気の沙汰とは思えない。共産主義からアメリカを守るための赤狩りのはずなのに、かえって国内を崩壊に導いている。まさに手段が目的化している良い例だ。それだけ当時のアメリカは、ソ連を中心とする共産主義勢力に、強い警戒心を抱いていたのだと分かる。

 しかしストーリーは散漫な印象だった。冒頭の知人に対する尋問、その知人の妻の自殺、デ・ニーロが監督の仕事に再び就くも免職、最後の公聴会などのエピソードが、それぞれ単発で起こっていて、結末に向けて一つにまとまっていない印象を受けた。もっとデ・ニーロに焦点を当てるストーリーにした方がよかったのではないだろうか。

根岸 圭一