劇場公開日 1987年6月20日

「僕の未来がよく似合う」恋しくて(1987) バラージさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0 僕の未来がよく似合う

2025年8月20日
PCから投稿
鑑賞方法:その他、映画館

幸せ

ドキドキ

カワイイ

初めて観たのは高校生の時のこと。レンタルビデオでだった。当時、僕はレンタルビデオ店に行くようになり始めた頃で、なぜ『恋しくて』を借りたのか今となっては覚えてないが、多分パッケージを観て主演女優のメアリー・スチュアート・マスターソンが好みのタイプだったからなんではないかと思う。その後、映画館でリバイバル上映がかかり(併映はこれまたリバイバル上映の『トップガン』)、もちろんそれも観に行った。さらに低価格再発売ビデオを買い、DVDに買い替え、今に至るまで何度も何度も観てる映画である。

内向的な画家志望のキースと、彼に秘かな想いを寄せる幼なじみの男っぽい少女ワッツ、キースが憧れる高校のマドンナのアマンダという3人の高校生が織り成す青春恋愛映画の傑作で、主演のエリック・ストルツとメアリー・スチュアート・マスターソンが素晴らしい。米国映画のすごいところはこういう娯楽映画に超メジャーな人気俳優ではなく、ストルツやマスターソンのような若き演技派性格俳優を持ってくるところ。そして何度も観てると気づくんだが、脚本が本当によく練り込まれてる。ストーリー展開も人物配置も絶妙で、余計な人物が1人も出てこないし、逆に足りない人物もいない。1つ1つのエピソードが過不足なく描かれていて、ここはいらないなと感じるところがほとんどなかった。

台詞もウィットに富んでいるし、映像にもセンスが溢れてる。特にラストからエンディングにかけては、台詞・映像・音楽全てが完璧だ。上のタイトルは、最後にストルツ演じるキースがマスターソン演じるワッツに言う台詞だが、何度聞いてもしびれる。個人的映画名台詞ベスト1だ。エンディングに流れる「Can't Help Falling In Love(エルヴィス・プレスリー『好きにならずにいられない』のカバー。大幅にアレンジしてるので言われないと気づかない)」も素晴らしい。役者たちも全員が良い。ストルツは本人以上に(演じている)キースだし、マスターソンも本人以上に(演じている)ワッツなのだ。この映画は青春恋愛映画のちょっとした古典として歴史に残るだろう。いや、米国ではすでに青春恋愛映画の古典になっているようだ。

そういや劇中でキースが父親に向かって自分が学校ではみ出しものにされてる理由をいくつか挙げる中で、DVDでは「親友は男勝りの女の子(ワッツのこと)」と言うシーンがあったが、ビデオ時代は「親友は男女(おとこおんな)」という字幕だった。映画館でリバイバル上映を観た際には「親友はトムボーイ」となっていて、確かにストルツは“Tomboy”と言っている。調べるとTomboyとは「お転婆」「ボーイッシュ」という意味となっているが、それだと劇中のニュアンスとは微妙に異なるような気がする。「男の子のように振る舞う女の子」「男の子のように活発な女の子」「男装が好きな女の子」という意味もあってこちらのほうが近いが、それじゃ台詞として長ったらしいし、かといって劇場公開時のように「トムボーイ」とカタカナにしただけではなんのことだかよくわからない。ビデオ時代の「男女(おとこおんな)」は苦肉の意訳ではあるが、ニュアンスとしては近いと思う。それに比べて、DVDの「男勝りの女の子」という表現はちょっと弱い。ポリティカル・コレクトネスなんだろうか。せめて「男みたいな女」くらいがちょうどいいと思うんだが。

バラージ