「エリック・ストルツの優柔不断にイライラ」恋しくて(1987) うそつきかもめさんの映画レビュー(感想・評価)
エリック・ストルツの優柔不断にイライラ
ジョン・ヒューズの映画が大好きで、当時見まくっていた。
この映画は少し毛色の違う恋愛もので、日本のコミックに、よく似た設定を見かける。あだち充作品を映画化したような展開だ。
何といってもメアリー・スチュアート・マスターソンのきらめきを余すところなくスクリーンに焼き付けたことが素晴らしい。この時彼女は二十歳そこそこで、役どころのボーイッシュなキャラクターに良く似合っている。エリック・ストルツは若手の期待の星で、本当なら彼が『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のマーティー・マクフライ役を演じるはずだった。幸いにしてマイケル・J.フォックスにその役を奪われ、映画は大ヒットしたが、たぶん彼は納得しているはずだ。「僕が出ていたら、これほどヒットしていない」と。何とも優柔不断で、意思表示が出来ない。そんな役にぴったりのイメージだった。
そんな男の子が、父親の言いなりに投資していたお小遣いを、全部引き出して、リムジンを借り、その運転手にトム・ボーイ(オトコ女・マスターソン)を雇う。そのリムジンで迎えに行くのは学園イチの高根の花、リー・トンプソン。この頃彼女は本当にきれいで、ティーンの憧れだった。皮肉にも彼女も『バック・トゥ・ザ・フューチャー』にキャスティングされ、人生最大の当たり役にめぐり合う。その2年後に、またしてもプロムに誘われるティーンの役でコメディ映画にキャスティングされるのは、どんな気持ちなのだろう。とにかく女優としてのキャリアは最盛期だ。この映画の監督であるハワード・ドイッチと結婚し、フェードアウトしていく。その後テレビドラマにシフトしていき、今では普通のおばさん役がとても似合っている。その姿が、年老いたロレイン・マクフライそっくりなのはものすごい予言なのか、本人が寄せているのか。
とにかく映画はまるくおさまり、ビリー・アイドルの『好きにならずにいられない』で幕を閉じる。この3人のキャリアが、まるで映画を象徴するように続いているのがとても不思議だ。