「一級品のクライムサスペンス」L.A.コンフィデンシャル 瀬戸口仁さんの映画レビュー(感想・評価)
一級品のクライムサスペンス
【あらすじ】
1950年代のロス市警。
熱血漢の刑事バド・ホワイト(ラッセル・クロウ)は、娼婦のリン・ブラッケン(キム・ベイシンガー)とスーザン・レファーツ、その用心棒で元刑事バズ・ミークスに遭遇する。娼館の経営者は、実業家のピアース・パチェット(デヴィッド・ストラザーン)。
上昇志向のエリート刑事エド・エクスリー(ガイ・ピアース)は、伝説の刑事だった父親を殺されており、逃げ続けている真犯人のことを「ロロ・トマシ」と呼んでいた。
カフェで6人が惨殺される「ナイトアウルの虐殺」事件が発生。被害者の中には、酔った勢いで容疑者を暴行する不祥事を起こし、解雇されたばかりの元刑事、ステンズランドや、バドが出会った娼婦レファーツがいた。
やがて、裏社会のボス、ミッキー・コーエン(ポール・ギルフォイル)逮捕後、
彼が持っていた大量のヘロインが行方不明となる。バドは、彼の後釜を狙って、犯罪者を追い払う、ダドリー・スミス警部(ジェームズ・クロムウェル)たちの裏活動に加わる。
タブロイド紙の記者シド(ダニー・デヴィート)と、ジャック・ヴィンセンス刑事(ケヴィン・スペイシー)は、無名俳優マット・レイノルズ(サイモン・ベイカー)を使って、同性愛者との情報を掴んだ地方検事を誘惑させたが、その現場には誰もおらず、マットだけが殺されてしまう。
虐殺事件の容疑者3人は、警察署から逃走し、エドが射殺して勲章を受ける。しかし、それぞれの件を疑うエドとジャックは協力し、マット殺害現場にあった娼館のカードから、バドを尾行することで、娼婦リンとの繋がりに気づく。。。
【感想】
やたら恐怖心を煽るスリラーとは全然違うし、次々ドンパチが続くアクションでもない。古典的なマフィア映画やフィルムノワールを期待すると肩透かしを食らうだろう。
だが、濃厚な雰囲気を醸し出し、非常に味わい深い、一級品のクライムサスエンスだと言える。
一連の事件の裏に潜む巨悪を暴く犯罪映画でありつつ、人物描写を重視した人間ドラマでもある。上映時間の長さも相まって、中だるみや冗長さを感じる方もいるかもしれない。
それでも、真相探しの筋書きと、1人1人のキャラクターを作り分けた脚本が素晴らしく、俳優陣がその期待を上回る演技を見せている。
出演者たちの持つ熱量と、物語自体の密度が重なりあい、見ごたえのある犯罪ドラマに仕上がっている。
本作が出世作となったラッセル・クロウとガイ・ピアースは、それぞれ武骨な熱血漢と、上昇志向のエリート刑事を熱演。ケヴィン・スペイシーも、世俗にまみれつつ、いつかどこかで正義を求めていた刑事を好演。
非業の死を遂げるゲイの俳優マット・レイノルズ役は、テレビドラマ『メンタリスト』で主人公パトリック・ジェーンを演じたサイモン・ベイカーだが、彼も豪州人で、本人にとって米国映画デビュー作だったかと。
(クレジット上は「サイモン・ベイカー・デニー」名義)
海外ドラマつながりでいえば、本作でミッキー・コーエン演じてるのは、『CSI:科学捜査班』でジム・ブラス刑事(警部)役のポール・ギルフォイルだね。
【以下ネタバレ】
黒幕はダドリー・スミス警部(ジェームズ・クロムウェル)で、ステンズランドとバズ・ミークスは、彼の元部下だった。
暗黒街のボス、ミッキー・コーエン逮捕後、紛失した彼の大量のヘロインを入手して仲間割れした挙句、ステンズランドがバズを殺して遺体をレファーツの家の下に隠し、そのステンズランドも、ダドリーによって消されたのが「ナイトアウルの虐殺」事件だった。
ダドリーは、実業家ピアス・パチェットが経営する秘密の娼館を利用し、タブロイド紙の記者シドに写真を撮らせて有力者をゆすっていた。
バド・ホワイトが愛した娼婦リン・ブラッケンと、エド・エクスリーとの密会写真を撮らせて、バドが見つければ2人が格闘すると仕向けたのも、ダドリーの目論見だった。
ダドリーの罠で、廃屋で鉢合わせたバドとエド。そこにダドリー達一味が襲撃。2人は協力して撃退し、エドはダドリーを背後から射殺する。