劇場公開日 2012年11月10日

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「アニメ版『時かけ』と並ぶ傑作」ねらわれた学園 よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0アニメ版『時かけ』と並ぶ傑作

2019年1月16日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

客席の9割を占めていた女子中学生達は客電がついて離席する際に口々にこう言った。

「あのぅ意味不なんですけど?」
「途中さぁワケわかんなくない?」
「で、何しに来たの、あの人?」

そんな子供達の傍で残り1割の中年(十中八九、全員薬師丸ひろ子で青春を棒に振った人達)はタオル地のハンカチでゴシゴシ涙を拭っていた。そう、中学生たちの物語なのに中学生には少々難解なお話。だいたいこのタイトルでアニメを作るなんて中年の発想、すなわちかつて中学生だった人達にこんな青春があったらよかったのにと嗚咽を洩らさせるために作られたものに決まっているわけで、今青春の真っ只中にいる連中にこの締めつけるような酸欠感は解りづらいのも道理。

というか実はこの映画、特にストーリーが解らなくても全然問題ない。学園内で起こったケータイに纏わる些細ないざこざがやがて学園を二分する大きな騒動となった渦中で、謎の転校生京極、彼に仄かな思いを寄せるカホリ、幼馴染で隣同士のケンジとナツキが織りなすどこまでも儚く切なくみっともなく赤裸々で美しいお話程度の認識でも差し支えない。この映画が愛おしくて堪らないのは“自分の想いが相手に伝わらない。相手の想いを汲んであげることが出来ない。青春とはすなわちコミュニケーションの不全と同義である”ということを手を替え品を替えこれでもかとこちらにぶつけて来るから。舌足らずの言葉の裏でとぐろを巻くとめどない感情の放つ眩しさに何度も目が眩む。これは原作へのアプローチ手法の類似性もあいまって、アニメ版『時をかける少女』と並ぶ珠玉の青春アニメと断言していい。

個人的には、生徒会役員でピアノが巧くてサーファーでファザコンで超美少女で可憐で優しくていじらしいというスーパー中学生、春河カホリちゃんに完全にハートをブチ抜かれました。私のような出来損ないの中年の鎮魂の為にこんな素敵な作品を作ってくれてありがとうございました。

よね