「天才画家ダリの若き日の姿をサスペンス映画に仕上げた作品?」天才画家ダリ 愛と激情の青春 Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
天才画家ダリの若き日の姿をサスペンス映画に仕上げた作品?
W・アレンの「ミッドナイト・イン パリ」は私が今年観た映画の中でもお気に入りの1本だが、その映画の中で、主人公がタイムスリップしてしまう、1920年代のパリの街には、ヘミング・ウェイや、ピカソや、ダリが出て来たのだが、絵画美術音痴の私は、登場人物の名前は訊いた憶えの有る人物ばかりでも、中々映画に出て来た作家の名前とその作家が遺した作品までは、詳しく結び付けてイメージする事が出来なかった。そしてその事が、凄く気になっていたら、丁度、スペインから、ピカソのいる芸術家の街パリに憧れて勉強にやって来ていた、ダリの青春時代を描いた映画がレンタル発売したとの事で、早速観る事にしてみたら、この映画はダリの事も描かれていたのだが、ダリの生涯と言う様で、そうでは無いと言う方が正しいのであろうか?どうやらこの映画主人公は、ダリと同じ美術学校に学んでいた、劇作家フェデリコ・ガルシーア・ロルカが主人公のようだが、このフェデリコが、スペインの当時の政府の政策に反対する抵抗運動に徐々にのめり込んで行く事で、捕えられ銃殺処刑されてしまうので、主人公が処刑された後も物語が存続して行くので、どうやらサルバドール・ダリがやはりこの映画の主人公と言わざるおえない事になる。つまり映画の主人公が2人いるのか、それともどちらか一人なのかも中々分かり難い構成で、物語が進行して行く為に、観ている観客は、中々どちらの人物に感情移入しながら観たら良いのか、判断がし難い為に、煮え切らない気持ちになる物語であるともいえるのだ。
ところで、この時代のヨーロッパでは、ゲイは宗教的意味合いからか、御法度な行為と言う事らしく、万が一、その性向が有る事がばれると、即犯罪行為として認められ、その人は死刑と言う事になる。21世紀の現在もイスラム教では確か、禁止と言う事になっていたと思うのだが、国によっては今も死刑に値すると言う。今日の我が国においては、多数のタレントでゲイだとカミングアウトしている人達も多数いる事を考えると本当に世界の事情や、常識と言うものの違いの多さに驚かされるのだ。どちらが良いと言う事を即決する事は出来ないけれど、何かと言うと直ぐに、逮捕されろくに公平なる裁判も行われる事も無く、一方的に死刑の宣告をされてしまう国家はやはり、人の命を軽視している様に思われてならない。
思わぬ方向に話しが逸れてしまったが、この映画は、ダリが晩年になってから、学生時代をどの様に過ごしたのかと言う事を知人達に話していた事をベースにして、物語が創られたようだが、確かにデフォルメされたであろう不自然な箇所もあるのだが、自己顕示欲の強烈な事で有名なダリが、その一方で、非常に繊細でナイーヴなキャラクターの持ち主で若き日から、内面の葛藤と闘い続けて生活して来た事が覗い知る事が出来た作品だ。
すなわち、ピカソの影響を色濃く受けて、シュールな作品ばかりをその生涯に渡って制作したダリと言うよりは、ダリ自身が自己の内面に抱える多様性の感覚、自己の多様な感性の中で苦悩し続けた、その心の表れこそが、彼の描き出した作品なのではなかろうか?
ダリの描く作品群いは、私の様な凡人には「へぇ~凄い画だね」としか言えない理解出来ない不明な点が多々有るが、この映画によってそのダリの謎の一端を観れた気がした映画だ。