「奇跡も、魔法も、あるんだよ」劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 後編 永遠の物語 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
奇跡も、魔法も、あるんだよ
願いと引き換えに魔法少女となったヒロインたちが辿る残酷な運命を描き、近年稀に見る傑作となったアニメの総編集劇場版後編。
これまでの伏線が繋がり、謎が明かされ、壮大に展開していく完成度の高い物語に身震いする。
まずは、前編のラストで魔女と化してしまったさやかの顛末。従来の愛と勇気が勝つストーリーだったら救われる所だが…。
さやかのエピソードはアンデルセンの「人魚姫」がモチーフなのは言うまでもない。想いを抱く幼馴染みの男子の為に身を捧げるが、決して結ばれる事は無く願いは報われない…まさに「人魚姫」そのもの。だからさやかは、“人魚の魔女”なのだ。
そして、ほむらの秘密。
時にまどかが魔法少女になるのを阻止し、時にまどかを影ながら見守って来たほむらの真意が明かされる。
それはこの物語の核と為すもの。真の主役はほむらだったのだ。
人知れず孤独な戦いを繰り返し続けて来たほむら。
その一途な思いに、胸震え、心痛まずにはいられない。
(余談だが、この直後に挿入されるTVシリーズOP曲「コネクト」は劇場版においては必要だったのだろうか? TVシリーズだからこそ感動を呼んだのであって、劇場版では少々蛇足に感じてしまった。それならば、劇場版ではカットされてしまったTVシリーズ第1話の冒頭の夢のシーンを前編冒頭に挿入してくれた方が、物語に深みが出たハズ)
ほむらの盲目的な行動は、かえってまどかと自分自身を苦しめていた事が分かる。
だが、立ち止まる事は出来ず、ほむらは最後の戦いに挑む。最強の魔女、ワルプルギスの夜。
その時、まどかは…。
遂にまどかは魔法少女になる決意をする。
しかし、願いはやがて呪いとなり、魔法少女たちは救われず報われず、永遠に負の連鎖を繰り返す。
その運命を変え、魔法少女たちの希望となるべく、まどかは願う。その願いとは…。
文字通り、全てが覆され、まさしく神の領域にまで広がっていく。
ラストの解釈はなかなかに難しいが、その分、考え甲斐があり、誰かと語り合いたくなる。
これほど完璧で無駄の無い物語はそうお目にかかれない。そこら辺の氾濫する実写映画など到底足下にも及ばない。
完全オリジナルとなる新作劇場版の公開も決定。
続きを作り出すのは楽な事ではないだろうが、それでも待ち望んでいるファンの願いは叶えられる事だろう。
だって、この物語は奇跡を繰り返してきた魔法のような作品なのだから!