劇場公開日 2012年9月28日

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「おバカだが、一見の価値有り!」アイアン・スカイ Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0おバカだが、一見の価値有り!

2013年3月27日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

笑える

楽しい

単純

「もう、いい加減にしろ!一体何時まで、ナチス批判映画を作り続け、観せられ続けるなんて、もう飽き飽きで、うんざりだ!」と叫びたかった。
何時までも、過去の人々の過ちをほじくり返す様なステレオタイプの戦争批判映画は、もう観飽きたと叫び出したかったのだが、この映画は、全くその類いの作品では無かったのだ。
人類の過去の歴史は決して変える事は出来ないし、史実は出来る限り事実に即して後世の人々に伝える責任が先人には有る。しかし今迄も過去には無数の戦争批判映画が制作されて来ているし、世界の何処かで今日も戦争や、紛争は繰り返されている事実が有る事から考えれば、新たな戦争映画を量産して観客に見せる意味などもはや、残念だが無いと私は考えている。
戦争批判映画が大量に制作された事で、戦争が終息した事は歴史的にも決して無い。
そんな理由から、私は個人的には戦争映画は大嫌いで、その類いの映画の必要性もあまり今では感じていないのだ。

しかし、この作品には、驚いた!只只驚いた、そして、にやりと笑みがこぼれ落ちた。
映画全編観ると全く何処もかしこも映画のその総てが、ブラックオンパレード!
それはまるで、金太郎飴の様に、何処を切っても跳び出すのは金太郎の顔ならぬ、政治の風刺劇の連続・連続・連続なのだ。
此処まで来ると、下手なカメラ撮影の映画でも、槍でも鉄砲でもぶっ放してくれていればそれで充分OKと言う気持ちにさせられるのだった。
先の世界大戦で大敗したかにみえたナチスが実は月に隠れ潜んで、再びこの地球を丸ごと丸々征服してしまおうと、目論んでいたと言うこの発想からして、めちゃくちゃ奇想天外で、ハリウッドでは決して出来得ない映画の誕生だったので、観る事が絶対ないような作品が観られる機会を得られた事を嬉しく思う。
そして大いに遊び心に火が付けられた様に、このチープで矛盾した作品を楽しく観る事が出来た。
月から地球へは難無く一瞬で、飛来する事が出来る程の高度な文明を発達させたかに見えるナチスであるが、その半面で人々のマインドや、生活とその様相は70年前のままで全く変化が無いと言うのも多いに笑える点だし、それ自体が、人の性質と言うものを巧みに皮肉っているのだね。
この作品が「月に囚われた男」に触発されて生れた作品で有るのかは知らないけれども、しかしこの作品は、アメリカ政治の風刺のみならず、各国の言い分もかなりの風刺が効いているものだ。
低予算で、チープな作りの映画でも、この映画が試みたような、資金集めから始まり、撮影の実現化、そして映画の完成まで漕ぎ着けて、こうして骨の有る作品を制作する事は映画の新しい未来の展開であり、映画の新たな可能性の発見の一つだと思う。

ryuu topiann