「(評価はこの程度ですが)異様な生々しさのあるヤバい作品」発情アニマル りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
(評価はこの程度ですが)異様な生々しさのあるヤバい作品
避暑のためニューヨークから簡素な別荘を訪れたジェニファー・ヒルズ(カミール・キートン)。
女性向け雑誌に短編小説を書いている駆け出し作家。
今回の休暇で長編小説を書こうと意気込んでいるのだが、途中立ち寄ったガソリンスタンドで地元の男どもに目をつけられたのが運の尽き。
白い肌で、長い髪、知的で痩身のそのスタイルは田舎町では見かけないものだった。
男どもはスタンドのオーナーとその仲間ふたり、それに小さなスーパーマーケットで働くやや発達障害の傾向のあるマシューの4人。
彼らは、モーターボートを使って、川辺にあるジャニファーの別荘に向かい、彼女を凌辱した挙句、マシューにナイフで殺せと命じる。
が、気弱なマシューは殺すことは出来ず、失神している彼女が流している血をナイフに塗りたくり、殺したと報告する。
それから数日、別荘から一歩も出なかったジェニファー。
だが、彼らへの復讐を決意した彼女は、教会で神の赦しを得るのだった・・・
といった内容で、本作製作の前年に実際に起こった事件に着想を得た物語で、実際の事件のレイプ被害者の女性は裁判で無罪となった。
本事件は、全米で広く知られているようで、本作の予告編でも盛んに告知していました。
さて、映画の出来はというと、全編ロケの安手のプロダクションで、カット割りや演技など下手の極みの個所もいくつもあるのだけれど、カット割りができないが故の長回し、カメラを置く位置がないためのロングショットが即物的な効果をあげていて、異様な迫力があるシーンもあります。
特に場所を変えて20分近く続く凌辱シーンの最後、別荘の居間の床で放心・失神したジェニファーの姿が長々と映し出されたあたりは、背筋が凍る思いがします。
後半のリベンジ部分は意外とあっさりしているのだけれど、主犯格のスタンドオーナーの下腹部を切り裂いて放置のシーンや、残るふたりの仲間をモーターボートで追い詰めて惨殺するシーンは、前者は居間で聴くプッチーニのレコードの響き、後者はモーターボートのモーター音が情け容赦ない、非情の効果をあげています。
70年代後半は『ヒッチハイク』『ウイークエンド』など、同趣の作品がいくつか製作されましたが、異様な生々しさという点では本作が一枚上でしょう。
参考作品として、ウェス・クレイヴン初監督作品『鮮血の美学』(1972)をあげておきます。