「殺伐した気分によりそってくれる気のいい友達みたいな映画。」ベルフラワー 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
殺伐した気分によりそってくれる気のいい友達みたいな映画。
なぜか最近、この10年近く前の映画を思い出す。バーで知り合い、コオロギ食べコンテストで戦った女と恋に落ちた男が、こっぴどくフラれ、失恋の痛手に苦悶し、『マッドマックス2』の悪党ヒューマンガス様に心酔していく。なんだこりゃっていうプロットだが、「いいことなんて何もねえ!現実なんてクソだ!」という憤りを、みごとなまでに悪的な映像に昇華させていて、そもそもの悩みが身もフタもないことだけに、どことなくバカげていて可笑しい。なにかが壊れたような映像を作り出すために、実際にカメラを落としたりして壊してみたというどうしようもないエピソードも愛らしい。
ああ、このコロナやら不景気やらなんやらでウンザリばかりが高まっていく昨今にあって、この映画の「クソが!」という気持ちこそ、アートとしてふさわしいのではないか。そんな極論も唱えたくなるくらい、殺伐した気分に寄り添ってくれる気のいい友達みたいな映画だと思う。
ちなみに本作以降名前を聞かないと思っていた監督・主演のエヴァン・グローデル、なんと新作2本が待機中のようで、日本公開を望みます!
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