「俺たちは天使じゃない」L.A. ギャング ストーリー 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
俺たちは天使じゃない
1949年。ロスアンゼルスの暗黒街を牛耳ろうと目論む
残忍なギャング、ミッキー・コーエンの“帝国”に
戦いを挑んだ名も無き警官たちを描くアクション作。
買収にも圧力にも屈しない。金も名誉も要らない。
正義を為し、親しい人々を守る為だけに命を懸ける
少数精鋭の極秘部隊が、巨大組織に戦いを挑む……。
この『アンタッチャブル』な設定だけで熱過ぎるぜッ!
ジョシュ・ブローリンとライアン・ゴスリングは
クラシカルな街並みや服装とよく馴染んでいて◎。
いかにもハードボイルドな顔立ちだものね。
他のメンツも銃・盗聴・投げナイフの
エキスパートと、個性豊かでヒジョーに良い。
けどアダム・ビーチだけは明らかにキャラがあやふや。
彼のラストシーンはもっと盛り上がってもよかったのに。
あと、エマ・ストーンは好きだが、ファム・ファタールな
役はちょいと似合わないかなあ。セクシーというより
キュートだからね、彼女。低い声は良かったけれども。
ショーン・ペンもハイテンションで頑張ってはいるが、
デニーロパチーノニコルソンほどの怖さがない。
大物の割には言動に余裕がなくて重量感に欠ける。
それはせわしないストーリー展開のせいもあるとは思う。
そうそう、
久々に拝見できた大ベテラン、ニック・ノルティは良かった。
まさに老獪。なんか一番汚職してそうな顔なんすけど(爆)。
ジョシュ・ブローリンって若い頃のニック・ノルティ
みたいな風貌だったんだと、二人並んで初めて気付く。
なんか師と弟子みたいな雰囲気がグッド。
1940年代を再現した美術はきらびやかで良いし、
(チャイナタウンや最後のホテルなんて特に良い)
いかにもギャング映画なシチュエーションも一通り登場する。
派手なアクションや爆破シーンだって多くて面白い。
だから基本的には満足なのだが……
なんだろうか、この何かが足りない感じ。
ギャング映画の基本的な部分はそつなく押さえてあるのだけど、
インパクトのある画やテーマの掘り下げといった、
作り手の個性あるいは“遊び”の部分が足りない気がします。
正義の為と信じながら悪党まがいの行動を取るという、
この映画最大の白眉ともいえるジレンマまでもが
掘り下げ不足に仕上がってしまった点が非常に痛い。
言うなれば……ファミレスのメニューといったところ。
安全パイだし割と美味しいが、突出してはいないという。
しかしながらあの終盤のシーンにはワクワクした。
『アンタッチャブル』の名シーンを彷彿とさせる、
クリスマスツリーを挟んでのスローモー・マシンガンファイト。
そう、こういう映画的な“色気”のあるシーンがもっと欲しかった!
基礎はしっかりしてるのだから、もっと冒険しても良かったのに。
判定3.75といったところだけど、ちょいと厳しめに見て3.5判定。
いやいや観て損はないですよ。観るものに迷った時はドーゾ。
〈2013.5.11鑑賞〉