「面白かった」ノア 約束の舟 Raspberryさんの映画レビュー(感想・評価)
面白かった
誰もが知ってる『ノアの方舟』の勇気ある新解釈。一応は聖書に添いつつ、ダーレン・アロノフスキーは寓話を通して、光と闇を語る。
本作の神は、人間のことに干渉しない。
蛇がイブにリンゴを食べるように「誘惑した」のではなく、「選択させた」とナレーションは言っていた。
問題は、神がなぜノアを選んだのかということ。
セトの末裔であるノアは、カインの末裔が築いた罪深き文明社会から離れて暮らしている。自然のままに生きることを実践し、自然(神)が人類を滅ぼすというのならそれに従う男。
ところが、自然の流れだけではどうにもならないのが人生。全てはノアの選択にかかる。
方舟計画で、世界をリセットし人類が滅びるのなら、自分たち家族も滅びなければ理屈が通らない。
新大地で自分たちが子孫を増やせば、大洪水の多くの死が無駄になるではないか!
光と闇が共存し、葛藤するのが人間の姿であり、誰も善悪を裁けない。ではどうすればいいのか。この問いの答えを見つける資質があったのがノアだった。
大義や欲望ではなく、自分が愛の行為者として“選択”すること。地上に愛を根付かせる使命に従って“選択”すること。解決策はそれのみ。神のせいにしてる場合じゃない。
世界中が危うい現代こそ一人ひとりの選択が重要。私はいろいろ腑に落ちた。
余談
神は限界がくると容赦なく全てをリセットする。犠牲者を一顧だにしない創造主の残酷さを描いた傑作『マザー!』へと続く。
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