劇場公開日 2006年6月3日

「日本語を勉強して、通訳になりたい。」プージェー 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0日本語を勉強して、通訳になりたい。

2020年4月29日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

※結末のネタバレはしてないつもりですが、勘のいい方には察しがつくかもしれませんのでご注意ください。

探検家関野吉晴がモンゴルの草原で出会った、遊牧民の少女プージェー。19990年、2000年、2004年と都合3度彼女の家族を訪ねた関野と、少女との交流のドキュメンタリー。
6歳にして巧みに馬を操り、いっぱしの働き手として家業を切り盛りするプージェー。はじめ、教師になることを夢見ていた少女は、関野に会ったことで、通訳の夢を抱くことになる。一緒に暮らす祖母も、これからの時代、草原を出て遊牧の暮らしと別れることを望んでいた。
しかし、運命はなんと残酷なラストシーンを用意するのだろうか。僕はもう何年前のことだったか、この映画を観たことがある。軽い気持ちで観ながら、この結末を知った時、とてつもない悲しみに襲われた。なにもよりにもよって、いくつも哀しみを乗り越えてきた彼女にそんな運命を授けることもなかろうに、と。そしてのちに、関野がプージェーのために留学を受け入れる準備をしていたことも知る。おそらく関野は、この運命の一端を自分が担ってしまったと後悔したのではないか。関係ないことなのに、もし彼ならば、と思う。あれほど、あの家族と親密な信頼関係を築いた彼なればこそ。

栗太郎