「"Scorpio Rising"」マジック・ランタン・サイクル 万年 東一さんの映画レビュー(感想・評価)
"Scorpio Rising"
「花火」(47年)
Fireworks
ゲイとサディズムで構成されているようで、水兵に抱き抱えられ、精液を思わせるふんだんに溢れるミルク、股間から発射される火花、マッチョな男とのやり取り、屈強な水兵たちに殴られ、恋人と寄り添う束の間。
「プース・モーメント」(49年)
Puce Moment
煌びやかなドレスが何着と画面いっぱいに、選んだドレスを着る女、屋上へと移動、高級そうなワンちゃん数匹を引き連れて、数曲流れるサイケな音楽はボーカルが一緒、バンド名が分からない、49年にある音楽ではない筈、後から加えたものなのか?
「ラビッツ・ムーン」(50年)
Rabbit's Moon
月に焦がれる道化の男、交わる不思議な人々、サーカスを思わせる雰囲気、全編流れるのはザ・フラミンゴスにザ・デルズやザ・カプリス、マリー・ウェルズにザ・エルドラドスといったオールディーズやドゥーワップ。
「人造の水」(53年)
Eaux D'Artifice
チボリ公園?噴水と色々な流れをする水、貴婦人が足速に、ビバルディの"四季"が流れ、奥ゆかしい雰囲気と小難しさ。
「快楽殿の創造」(54年)
Inauguration Of The Pleasure Dome
これぞ映像の魔術師と言える怪作、斬新な作品全体のLOOKとサイケな美的センスが素晴らしい。
とにかく飽きることのない刺激的な映像の場面転換など先鋭的で実験的な凄まじさ!?
「スコピオ・ライジング」(64年)
Scorpio Rising
これを観る為の"マジック・ランタン・サイクル"でもあり、これこそがケネス・アンガーと個人的に。
「乱暴者」のマーロン・ブランド、ジェームズ・ディーン、ヒトラー、キリスト、本作を観て激怒なヘルズ・エンジェルス、圧倒的なゲイの世界観は"トム・オブ・フィンランド"でもありフリードキンの「クルージング」的でもある。
ウィレム・デフォーの「ラブレス」でのスタイルにライアン・ゴズリングのジャケットの蠍な「ドライヴ」などリスペクトされる訳で。
「K.K.K. Kustom Kar Kommandos」(65年)
T型フォードのホットロッドを優しく愛でる三分間に身も心も癒される。
「我が悪魔の兄弟の呪文」(69年)
Invocation Of My Demon Brother
悪魔崇拝的なナチズムと"オルタモントの悲劇"のストーンズやヘルズ・エンジェルスを映し込み、フルチン姿の男たちと音楽はミック・ジャガー。
「ラビッツ・ムーン」(79年バージョン)
Rabbit's Moon
ドゥーワップの楽曲群からジャンルはポストパンクへと様変わり"The Raincoats"の曲がループされる。
音楽が変わるだけでまた違った感想も生まれてくる。
「ルシファー・ライジング」(81年)
Lucifer Rising
神秘的で悪魔主義的な世界観とマリアンヌ・フェイスフルやマンソン・ファミリーからボビー・ボーソレイユが音楽を担う、ヒッピー的要素がプンプンと醸し出されたハリウッド・バビロンの萎びた模造。
「マウス・ヘブン」(04年)
Mouse Heaven
1920年代から30年代に限定したアンティークのミッキー・マウスの人形や玩具などのグッズがたくさん出て来てミッキーファンには楽しめる??
「ザ・マン・ウィー・ウォント・トゥー・ハング」(02年)
The Man We Want Go Hang
1998年4月にロンドンのオクトーバー・ギャラリーで開催されたアレスター・クロウリーの絵画展「THE OLD MASTER」のドキュメンタリーをケネス・アンガーが監督した作品。
まぁ作品を接写したような、登場する品々はジミー・ペイジなどのコレクションから、らしい。
「ラビッツ・ムーン」(フッテージ)
Rabbit's Moon
メイキング映像集的な無音。
10年以上前にこのDVDを購入してから久々に鑑賞、ケネス・アンガーというより"スコピオ・ライジング"に興味津々だったあの頃、その気持ちはいまだに変わらないが他の作品も興味深い反面、独特な世界観に難しさと斬新さがゴチャゴチャに廃れない凄まじさ。