「些細な夢が叶わぬ妄想に変わる哀れ」アルバート氏の人生 マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
些細な夢が叶わぬ妄想に変わる哀れ
黙々と卒なく仕事をこなすウェイター、アルバートの姿を追うオープニングによって、“彼”の真面目な性格や優しさ、気配りのよさを知る。
女であることを隠し、コツコツと貯めたカネを隠し、いつかそのカネで自由を掴むのが夢だ。
そのままいったら、もうすぐ夢が叶うはずだったのが、ハンサムな“大男”ペンキ職人のヒューバート・ペイジによって狂い始める。
アルバートの「些細な夢」が、ヒューバートとの出会いによって「膨らむ夢」に変化してしまう。それが叶わない「妄想」だということに気づかないアルバートに哀れさを感じる。アルバートが求めたのは家族という形であって、そこに愛が伴わない。アルバート自身、これまで誰からも愛されたことがないのだ。
心から人を愛することができないまま、誰にも本名を明かさずアルバートのまま、一思いに夢を追ってしまう。
人々は40年もの“彼”の人生や夢を顧みることなく、それぞれの人生を歩み始める。世の中が何事もなかったかのように時を刻み続けることに無情感をおぼえる。
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