「カラス“は”親指」カラスの親指 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
カラス“は”親指
詐欺師を主人公にした単なるコン・ムービーと思うなかれ。
軽妙な味わいと爽やかな感動が余韻を残す“ちょっとイイ話”なコン・ムービー。
詐欺師コンビのタケとテツ。
二人の元に、やひろとまひろの姉妹と姉の恋人・貫太郎がひょっこり転がり込んでくる。
5人の奇妙な共同生活がとってもユニークでほのぼの。
…だが、タケと姉妹には共通の悲しい過去が。
タケは、友人の保証人になった事で背負った借金の肩代わりに闇金で働かされ、愛娘と取立先の若い母親を死に追いやった過去を持つ。
その若い母親というのが、姉妹の実母。
偶然の巡り合わせで再会したタケは、罪滅ぼしのようにアパートを追い出されたまひろたちを自分たちの家に招き入れた。
切り出せないでいたタケに最後、まひろがかけた言葉に救われる。
人生のどん底で生きながらも、気遣い支え合う擬似家族の絆が温かく胸に染み入る。
勿論、本作はコン・ムービー。
彼らは自分たちの人生を滅茶苦茶にした闇金相手に、一世一代の作戦を決行する。
…ところがこの作戦、見ていてハラハラするほど危なっかしい。
これで騙される方も騙される方だ…と、つい思ってしまうが(笑)、何もこの作戦が映画の最大の“騙し”ではない。
最大の“騙し”は、タケとテツがまひろと偶然(?)出会った時から始まっていた…!
タケ=阿部寛もさることながら、憎めないテツを演じた村上ショージが好演。“一家の大黒柱”の如く映画でも大きな役割を果たす。
やひろ=石原さとみは天然小悪魔な魅力を振り撒き、まひろ=能年玲奈のキュートさ&フレッシュさは、じぇじぇじぇ!(こんな使い方でイイのかな?)
図体はデカいがおっとりした性格の貫太郎=小柳友もナイス。
週刊誌の記事やチラシやポスター、言葉を並べ替えるアナグラム、そして五本指を家族に例えた話…随所に散りばめられた伏線が見事に繋がるラストは意外な驚きと優しく爽やかな感動。
160分の長尺も全く気になる事なく、最後まで心地良い。
映画見終わってから分かるタイトルの意味にも座布団一枚。
確かに、カラス“は”親指だった!