ビル・カニンガム&ニューヨークのレビュー・感想・評価
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ビルさんの人柄
やっている事は盗撮みたいな行為なのに、ビル・カニンガムさんの人柄が素晴らしく、許される感じがした。それから、ニューヨークという地域もそれを許容する寛容さがあると思う。日本ならすぐに迷惑防止条例とかで、警察沙汰になってしまう。世界中がビルさんのような明るくて楽しくて熱心で、ニューヨークのような寛容さがあったら、平和な世の中になるのではないだろうか。
何かと顔色を窺ったり、許諾を得ないと何もできない日本は窮屈で嫌だなとますます思った。しかし日本より貧しい国がいいかと言えば、医療なども満足ではないだろうし、物事はいいとこどりができないので困る。
そんなビルさんも長年住み慣れたカーネギーホールを追い出されたりもするので、ニューヨークでも窮屈な思いをする場面もあった。
もしかしたらビルさんは童貞ではないだろうかとふと思った。あれだけファッションに目ざとい人なのに、自分のファッションには全く無頓着で、全く目立ちたがりではないところがキュートであった。
爺さんと自転車。
この日は御歳80歳を越えた爺さん映画二本立て♪という一日。
まず一本目は、ビル爺さん。NYタイムズ紙の人気カメラマン、
らしいのだけど…^^;
今作を観るまで名前も存じ上げず、お顔を拝見したのも初めて。
あら!でもアチラでは相当な有名人だったんだ、この御方って。
1929年生まれが、颯爽とスポーツサイクルに跨り街へ繰り出す。
いわゆるストリートファッションを撮るのが専門(新聞コラムの)
らしいのだが、まぁホントによく動いて、よく撮る。さすがだ。
カメラマン歴50年以上というのだから、腕ではプロの領域だし
名立たるファッションショーでも彼は写真を撮ってきている。
ただ面白いのは、彼の舞台はそこよりもストリートなのらしい。
一般人が日銭を賭けて命一杯自腹ファッションを醸し出す姿を
彼はいち早くモードに取り入れる。プロの着眼点もかなり正確。
新聞コラムの紹介で、そのファッションが口コミで広がるのは
日本の女子高生が雑誌やネットで流行らせるファッション眼と
よく似ている。え?なんであんな格好が流行るの??と私たち
オバサンが首を傾げるセンスにだって、それが世界的に広がる
人気を目の当たりにしたら、スゴイ!と認めざるを得なくなる。
目の付けどころ、っていうのはそれが大好きな人には神憑的に
存在するんだろうか。センスに乏しい私には羨ましい限りだ…。
しかし爺さんと自転車というと、昨今の流行りは桐谷さんだ(爆)
(スイマセン、桐谷さんはまだ60歳代なんだけど)
あの方は(マツコの番組などで紹介)株式のトレーダーなのだが
その身体能力がハンパじゃないらしい。是非とも彼とビルとで
自転車疾走競技でもやったらどうだ?とつい思ってしまったが、
何しろ80歳を越えてなお、あれだけスイスイ走れるのが羨ましい。
独身。独り暮らし。暮らしぶりはホントに質素。
しかし大きな違いはビル爺の方は、ホントに写真以外は要らない!
という感じなのだ。結婚も子供も家族も、豪邸も高級車も高級服も。
食べることにすら興味がない!というのには驚いた。
パーティーでも何も口にしない。あれで健康面は大丈夫なのか!?
撮影中もほとんどファストフードしか口にしていない。いわゆる
健康診断など、きちんと受けているんだろうか?(いないよねぇ)
大きなお世話だが、家族が居るなら、こんな風に口煩く言われる。
彼はカメラと写真以外の生活面ほとんどを切り捨て、
自身の好きなように生きている。彼の人生だし好きにしたらいいが
家族を抱えて責任塗れのお父さん方はさぞ羨ましがるだろう。
ビル爺の削ぎ落とし方は、本当に潔すぎて、口アングリなのだ^^;
しかし人生を振り返って(まだまだ振り返りなどしないのだろうが)
自分の好きなことを仕事にできて、それを思う存分やれて、迷惑が
かかるとすれば自分自身だけ…だったら、何にでも挑戦できそうだ。
ただ面白いのは、これはお国柄かもしれないけれど、
日本人はそれをやりながらも、常に家族を意識している気がする。
桐谷さんも「結婚はまだ諦めてない」「私にも家族がいれば…」なんて
言っていたし、次に観た「二郎は鮨の夢を見る」の二郎さんだって、
ご自身の子供達には最高の愛情と、継仕事を与え続けているのだ。
自分の人生なんだから、自分の好きなように…なんてのたまいつつ、
親を喜ばせたいとか、子供に楽をさせてあげたいとか、
結局そのために頑張ってしまう日本人という気がする(いい意味で)
ビル爺の笑顔が素晴らしく、その場にいる人を皆幸せにするような
ビッグスマイルで(悪態もつくけど^^;)他を巻き込んでいく優雅さが
何より羨ましい。多分観た後は青い上着を買いたくなることだろう。
(革新マニアが世間を才能で包むと凄い効果が生まれるってことね)
すごいよ、このじいさん。格好良すぎる。
ファッション・カメラマンのドキュメンタリーということで、「情熱大陸」みたいなもんだろうとあまり期待せずに観たのだが、もの凄く良かった。
80歳すぎて、破れた雨合羽を着て自転車乗って、ニューヨークの街を走り回る。
ファッションの写真を撮るために。無名有名にかかわらずカッコいい人を撮るために。
写真が撮れればそれで良いので、食や住にはこだわらない。
伝説的なカーネギーホールに住んでいたけど、立ち退きをくらう。
それでもかまわない。古い栄光よりも、ビルにとって大事なのは、「今」だから。
80歳すぎてなお、昨日よりも今日、今日よりも明日を見てる。
すごいよ、このじいさん。格好良すぎる。
ファッション初心者から見ると、本作に登場する人たち(セレブやデザイナー、有名雑誌編集長など)が、そこはかとなく胡散臭くて強烈過ぎてお洒落というより最早別の次元の者に感じてしまうのが悲しいところだが、そんなお洒落怪物達の間をビルは飄々と通り過ぎて行く。まさに、お洒落界の水木しげる先生なり。あっぱれ!
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