劇場公開日 2013年5月18日

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「最高にクール!NYと共に映し出される少年の心を持つ爺さんが最もホットでカッコイイ」ビル・カニンガム&ニューヨーク Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5最高にクール!NYと共に映し出される少年の心を持つ爺さんが最もホットでカッコイイ

2013年10月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

幸せ

友人がこの作品を今年観た映画の中で1番良い作品だと言って知らせて来た。
しかし、ドキュメンタリー映画でありながら、今年公開しているヒューマンドラマを越える程に面白い映画なんて存在するのだろうか?
そんな疑問を持ちながら、半信半疑の私は、この映画を観るのを何よりも楽しみにしていたのだ。
でも観た結果は、本当にドキュメンタリー作品でも、こんなに良い映画が有る事を、発見出来て幸せな事だった。
一口に映画と言っても、実にその作品が描く世界は多様で、様々な価値を持つ事を改めて思い知らされた、目から鱗の作品だ。
映画とは、実にNYの街と同様に、素晴らしく多才な魅力に溢れている生き物だ。

アメリカって国は良くも悪くも本当に凄い人達を産み出すエネルギーに満ち溢れている国なのだと今更ながら、改めて感心させられる。
人種の坩堝NY、そこは実に多種多様な人々が暮らす街だからこそ、自然とこの街に暮す人々は非常に個性的で、異才と鬼才を放つエネルギーに溢れているのは当然の事なのかも知れない。
勿論その街に暮す人々のファッションを追い続けて来たビル・カニンガムがこの作品の主人公なのだが、もう一人の主人公は、彼が見つめ続けて来たNYの街そのものだろう。

そんな個性溢れる街を時代の側面を切り取って来たビルと言う人物は洗練された先端のエネルギー、流行を嗅ぎ分ける天才的な選択眼を持つ才能の持ち主だ。
正に彼こそは、本当のクリエイターなのだ。
様々な人種も、階級も、そのバックボーンの総てが異なる人々が一緒に生活を存続させていく事が可能な街が秘めている魅力が、ビルの撮影したNYっ子、一般の平凡な庶民のファッションからも見えて来る。そしてこの街の歴史の匂いを運んでくる。
カーネギーホールのアパートメントスタジオに今尚暮していた彼は生粋のアーティストだ。
もっともっとアンディーウォーホールの様に扱われても決して不思議ではないアーティストだが、彼の持つ、自然で飾り気の全くない、親しみ易さも、彼の写真からも滲み出ていて、正に彼の生き様が、一つのアート作品と言っても過言ではない。
個性的なファッションを追い求める事しか、頭に無い完全なる仕事バカ一筋の職人でも有るのかも知れない。
人は年齢と共に、老いて行くと、流行を嗅ぎ分ける目も鈍くなり、マンネリして、いつしか古い人間になってしまうものだが、彼は愛用のチャリンコを我が家の庭を、走り廻るようにNYの街を疾走し、その目はまるで少年のような、輝く目で今、この瞬間を象徴する写真をフレームに捉えている時の、その目の輝きの美しさと、厳しさにはほれぼれする。
80歳を越える無給で、・無休で働き続けるこんな爺さんを目の当たりにすると、あまりの凄過ぎるビル爺さんの個性に驚きを憶え、ビルに出会えた事は、きっと貴方の価値観も変えてしまう事だろう。
生きる事、好きな事を成し遂げる事の喜びが彼の全身から溢れ出ている。
ビルの強烈な個性を観ているだけで、生きる喜びと人生の楽しさ、希望が生れて来ると言うものだ。是非機会があれば、この作品を観て欲しいと願わずにはいられないのだった。

ryuu topiann