「嘘っぽさとくさい台詞に酔えない」BRAVE HEARTS 海猿 モーパッサンさんの映画レビュー(感想・評価)
嘘っぽさとくさい台詞に酔えない
「そんな馬鹿な」と感じる箇所が多くて、男のロマンに酔えませんでした。ざっと思いつくだけでも:
(1) 片側2機のエンジンが同時に止まるという設定が不自然。エンジン1機が止まっただけでは正常に飛行できるのでこういう設定にしたかったのでしょうが。
(2) 百歩譲って片側2機のエンジンが同時に止まったとしても、なぜ同時に油圧システムがダウンするのでしょう。これも不幸な偶然が重なったと言うのでしょうか。エンジンから破片が飛散しても、破片が傷つける可能性がある場所に飛行に必要なシステムは通っていないと思います。
(3) 機内がガタガタと揺れ続けるのが変。この振動の原因は何ですか。
(4) 「海上に着水するなんて訓練受けてない」という台詞が出てきますが、そんな馬鹿な。脱出に必要な時間浮いていられる体勢で着水する訓練を受けているでしょう。
(5) 着水後、胴体が二つに分離したりしません。
(6) 着水した機体が「20分しか浮かんでいられない」という発言が何度もありますが、90秒ではないでしょうか。結果として20分浮かんでいられたとしても、規定の脱出時間90秒は沈まないというのが設計上の性能なので、救助する側としては「90秒でどうやって助けよう」と考えるのでは。
(7) 着水直前フラップが全開してしていました。油圧システムがやられたという話はどうなったのでしょう。
(8) 機長が計器盤とシートの間に挟まれていましたが、機首が損傷していないのに、着水の衝撃だけでシートがそんなところまで移動するとは信じられません。
(9) 「着水する頃には日没になって救助できない」という問題はどうなったのでしょう。着水後も白昼のように見えますが。仮設誘導灯のどさくさにまぎれて忘れた?
(10) ギャレーからカートが飛び出して凶器と化していましたが、マニュアルどおり固定されていれば事故の衝撃でも動かないのでは。
(11) 美香がトイレに閉じ込められていましたが、トイレの出入り口は通路に向かってついているので、暴走するカートなどは通路を通り過ぎるはず。出入り口をふさぐように集まってくるとは思えません。
(12) 吉岡は自力で動かせない構造物にはさまれたはずなのに、水没後、金属を切断する機材をもたずに隊員が収容に行き、素手で障害物を取り除いていました。状況から見て必要になるであろう機材を準備して潜るのがプロでは。水深60mでは取りに戻るというのも簡単でないだろうし。