「猛烈に甘いが、真摯な想いが伝わる映画」BRAVE HEARTS 海猿 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
猛烈に甘いが、真摯な想いが伝わる映画
『海猿』シリーズは前作(劇場版3作目)しか観たことが無い自分です。
3.5判定は僕にとって『観て損ナシ』の意味なのだが、
その割には文句の多いレビューになってしまった。
特に前作について批判的な内容になっているので、
読みたくない方は読み飛ばしていただきたい。
さて本作、
大作感のある画作りやCGのレベルは前作同様に高かったが……
相変わらず甘い、甘いねえ!!
ハワイ土産のマカダミアナッツチョコを森永ココアで流し込むのと同じくらいに甘ったるいぜ!
ジャンボジェットのエンジン3基が破砕、
平衡を保てない不安定な状態での胴体着水、
おまけに残り1基のエンジンは爆発炎上、
機体は着水後20分で真っ二つ&垂直沈下。
この状況で300人超の乗客が全員助かるだなんて、ハッキリ言ってファンタジーですよ。
本当に災害に遭った人の中には怒る人も居るのではと心配になる。
最後に佐藤隆太が生還したのも……確かに伏線は張ってたけれど、
あの沈痛な雰囲気でやっぱり助かるなんて、いくら何でも甘過ぎる。
(ちなみに劇中でも言及していた『ハドソン川の奇跡』の場合は乗客乗員合わせて155名。
翼の大きな破損や火災も無く、機体が完全に沈んだのは着水から約1時間後だったとか)
だが、しんどい時期には砂糖の甘さも必要だ。
『観て損ナシ』と感じたのは、この映画が3.11以降の世相を反映した、
人の善良さを信じようと願う映画だったから。
前作最大の不満点は、人の生死に係わる大災害が、
主人公らの人間ドラマを盛り上げる為の単なる“ツール”に過ぎなかった点だ。
だが今回は違った。
今回は、人命救助そのものをテーマに据えた真摯な映画になっていた。
前作では少しも心が動かなかった僕も、今度は素直に感動。
主人公・仙崎が自らの命も顧みず操縦士を救おうとするシーンには胸が熱くなったし、
彼ら救難隊だけでなく、空港、警察、病院関係者みんなが一丸となり、
『誰も死なせたくない』と必死に頑張る姿は感動的。
もしかすると彼等を突き動かしていたのは、『今度こそは誰も死なせない』
という震災後から続く強い想いだったのかも知れない。
前作の仙崎のようなワンマン・ヒーローは要らない。
人を救うのはいつだって、ただの人なんだから。
かえすがえすも甘い映画だが、それでも本作は
先の災害で命の重さを再認識した者にしか作れない作品だと思う。
<2012/7/14鑑賞>