「この夫婦は続くんだと」夢売るふたり こぉさんの映画レビュー(感想・評価)
この夫婦は続くんだと
最後にカモメを見て、映画を観終わって、
『一生を同じくする』という決意のある夫婦の話なんだろうと
自分の中では結論が出ました。
夫から妻へ、裏切りもある。辛辣な言葉もある。
妻は夫に、執着があるのに、結婚詐欺をさせる。
結婚詐欺を繰り返し、
最後に子持ちの公務員と
関わっていったなかで。
火事という命の危機の中でも持ち出した、
板前の命ともいうべき包丁を
彼女の家に持っていく夫。
その家に忍び込み、
その包丁が雑に置かれているのを見た妻。
どんなにか心が乱れただろう。
階段を踏み外しもするだろう。
包丁は、2人の夢の象徴じゃないかと思う。
この夫婦の、危機といえばこの地点だった。
そして夫がした選択に、妻はフォークリフトを運転して
夫の出所を待つんだろう。
夫の選択は、結婚詐欺を続ける事への
ピリオドだったような気がする。
この2人、
憎んでも蔑んでも、相手がどうでも、
根っこでバカみたいに相手を愛しちゃってるのかもしれない。
結婚詐欺なんて、褒められた事じゃもちろん無い。
しかしするほうもされたほうも、
それでも生きていく。
ひとときの『夢』を確かに売ったのかもしれない。
前半をすっぱり端折りましたが、
全てのシーンに
意味があると思いました。
松たか子さんの、
全く揺らがない見る者を恐れさせる強い瞳に
惹きこまれました。
阿部サダヲさんは、夫の掴めない役所を
演じるのにピッタリな俳優だと思いました。
妻側の気持ちは、自分が女として
なんとなくわかるのですが、
夫側の気持ちが掴み切れなかった点が少し
残念でした。
結婚詐欺をはたらいているうちは、
相手を好きだという、自己暗示がかけられる
タイプだったのか。
純粋に好意を寄せている様子と、
見事に金を引っ張る様子が私の中では
一致せず、冒頭にあった
『嫁に操られている様に見せて
実は自分が操っている』という言葉どおり、
観客さえ踊らされた感じがします。
よくよく練られた、
面白い映画だと思いました。
ただ後味はあまりよくないかもしれません。