机のなかみのレビュー・感想・評価
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𠮷田恵輔、驚異の長編デビュー作
いい加減で下心しかない家庭教師と、その教え子の女子高生の、ふたつの視点から描かれるどうしようもない恋の話。𠮷田恵輔監督が、前半と後半でまったく違うスタイルを使い分け、居心地の悪いブラックコメディからとんでもなくエモい青春映画へと鮮やかに変貌する。長編デビュー作にして非常にトリッキーな構成を苦もなく成功させていることに、何度観ても驚かされる。 バカバカしくて、情けなくて、品がなくて猥雑で、意地悪だけど、なんだかかけがえのないものを描いていて感動してしまう、という、いうなれば𠮷田恵輔的なものがこの時点でほぼ完成している大傑作。あべこうじと踊子ありが演じる家庭教師と同棲相手のしみったれた四畳半恋愛のリアリティも凄まじい。これより前の『なま夏』や『メリちん』からの飛躍の大きさを考えても、突如天才が降りてきたような凄味がある。
【嫉み、妬み、優しさ、良い恰好をしたいという人間の本能をエロティシズムとコミカル要素を塗して描いた作品。𠮷田恵輔監督の変わらぬオリジナル脚本のレベルの高さに驚いた作品でもある。】
◆感想<Caution! 内容に触れています。> ・家庭教師、馬場(あべこうじ)と、大学受験を控えた可愛らしい女子高生、望(鈴木美生)の二人の視点により、勝手に女子高生に好かれていると勘違いし、舞い上がる男の滑稽さと、恋する女の子の一途さを並行して味わえる作品である。 この作品の高校生達を含めた登場人物たちの、嫉み、妬み、優しさ、良い恰好をしたいという人間の本能を絡ませつつ、二つの恋が交わる予測不能な展開が、面白い。 ・高校生の娘と風呂に入るお父さん(内藤トモヤ)の過保護過ぎる姿や、吉田監督作品には、欠かせないワンポイント俳優である、三島ゆたかもしっかりと、出演しており𠮷田ワールド形成に寄与している。 <長編デビュー作にて、このオリジナル脚本のレベルの高さ。 𠮷田恵輔監督の、今作後の邦画界での活躍が納得出来る作品である。>
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