「𠮷田恵輔、驚異の長編デビュー作」机のなかみ 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
𠮷田恵輔、驚異の長編デビュー作
いい加減で下心しかない家庭教師と、その教え子の女子高生の、ふたつの視点から描かれるどうしようもない恋の話。𠮷田恵輔監督が、前半と後半でまったく違うスタイルを使い分け、居心地の悪いブラックコメディからとんでもなくエモい青春映画へと鮮やかに変貌する。長編デビュー作にして非常にトリッキーな構成を苦もなく成功させていることに、何度観ても驚かされる。
バカバカしくて、情けなくて、品がなくて猥雑で、意地悪だけど、なんだかかけがえのないものを描いていて感動してしまう、という、いうなれば𠮷田恵輔的なものがこの時点でほぼ完成している大傑作。あべこうじと踊子ありが演じる家庭教師と同棲相手のしみったれた四畳半恋愛のリアリティも凄まじい。これより前の『なま夏』や『メリちん』からの飛躍の大きさを考えても、突如天才が降りてきたような凄味がある。
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