「アメリカ南部の美しい自然がローガンの傷心した生活を癒してゆく、そのプロセスに泣ける人がいるかも?」一枚のめぐり逢い Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
アメリカ南部の美しい自然がローガンの傷心した生活を癒してゆく、そのプロセスに泣ける人がいるかも?
ラブストーリーファンにはきっと楽しめる映画かも知れない。そして女性が観たら泣けるお話なのかもしれないし、6月の花嫁シーズンとしては、この様な女性映画が公開されるのは丁度良いタイミングなので、デートの時に観ても、可の部類の映画かな?あまりドギツイ絡みのシーンも決して多く無いので、安心して観られる映画かもしれないね。
さて、ニコラス・スパークス原作の「親愛なる君へ」が昨年の秋に公開されたばかりだが、今回の「一枚のめぐり逢い」も「親愛なる君へ」同様にイラク戦争絡みの帰還兵の恋愛小説の映画化だ。立て続けに2作品共に、兵士が主役の映画と言う事から、イラク戦争の後遺症がもたらす数々の悲劇が、今ではアメリカ社会の中で大きな影を落とす重要な要因の一つに成りつつあると言う現実がこの作品からみえてくる。
70年代のアメリカでは、ヴェトナム戦争終焉の頃で、数々の戦争がテーマの小説が映画化され、名作が製作された。「地獄の黙示録」「ディアーハンター」「帰郷」等々限が無い。
しかし、日本の映画ファンにとっては、ニコラスの原作作品は、恋愛小説を書いているベストセラー作家である事から、彼の映画化される作品の中ではいつも数々のスター俳優を生むきっかけ作りとなり、明日のスターを発見する楽しみもある。
一例を挙げると、最近公開された映画「君への誓い」で主演するチャニング・テイタムは「親愛なる君へ」でその人気を不動にし、チャニングの相手役を務めたレイチェル・マクアダムスは「君に読む物語」で注目され、その後多くの作品に出演している。
この流れから考えると本作品で主演のザック・エフロン演じるイラク帰還兵ローガンの相手役のベスを演じるテイラー・シリングも今後大ブレイクの可能性もあるし、演技の方もまあまあの出来で、可愛らしい俳優なので、次回作に期待したい感じも有った!
されど、肝心要の本作品は、相変わらずありきたりの平凡な作品で秀作や力作とはいかない作品だ。理由を言うならば、イラクから帰還したザック演じるローガンは戦争のPTSDに苦しみ、帰省した家に住む姉の家族とも上手く生活出来ない事から、直ぐに戦場で拾った写真の女性を探しに放浪の旅に出るのだが、帰還兵のローガンが主役であるはずの本作が、途中から写真の女性であるベスの話が中心となり、ローガンはベスを優しく見守る、控えめな好青年位にしか扱われていないし、その一方では、ベスは離婚相手からの嫌がらせや、子供の親権問題等で悩む、難しい役処も沢山有り、見せ場満載だ。そんな彼女の傍らで優しく見守ってくれるローガンへと次第に心が揺れると言う話しなどは、正にベスの心の葛藤を描いている作品であって、ローガンの存在は、刺身のツマ程度の扱いだ。ストーリー展開のその殆んどが、ベスの葛藤を描く事に終始し始める。ラブストーリーはどうしても女性中心に物語が描かれるのは当然なのだが、しかしあくまでも、本作品では、主演はザック・エフロンだ。ベスの写真の持ち主である兄と妹ベスの関係性や、祖母との関係など彼女の廻りの人間関係も良く描かれているが、ローガンの家族は、ファーストシーンに出ただけだ。これは原作の恋愛話自体が無理な設定の為か、この描き方が最良と言う事になったのかも知れないが、帰還兵の苦悩を描く作品と呼ぶなら余りにもリアリティー
性の欠如した薄っぺらな作品と言われてもしょうがない作品だ。
しかし、単なるお涙頂戴映画として、深く考える事無く、デートや気分転換に観るには普通に観られる作品だ。しかし、ファーストデートは思い出に鮮明に残るものだから、もしファーストデートで、本作を選ぶのなら他の作品に代える方が得策と私は個人的には考えるのだが、あなたは、どんな基準で映画を観るのかな?映画もTPOに合わせた選択が必要な事を改めて想い起こした作品だ。私は映画に関しては殆んど、何でも観るので、雑食系だ。私同様に、オールマイティーな映画好きには可も不可も無い作品だろう。