「日本映画史に、残ってしまう」市民ポリス69 ダックス奮闘{ふんとう}さんの映画レビュー(感想・評価)
日本映画史に、残ってしまう
「大木家のたのしい旅行 新婚地獄篇」などの作品で知られる本田隆一監督が、哀愁を漂わせたら右に出るものはいない俳優、酒井敏也を主演に迎えて描く、ラブコメディ。
人気アイドルグループ「ももいろクローバー」の元メンバー、早見あかりの美貌につられて本作を観賞しようとお考えの皆様、貴方はとんでもない作品を掴まされようとしております。決して、早見嬢が大根女優だからという訳ではありません。この一本・・・混迷の日本映画史に、その名前を刻んでしまうのではないかと危惧しているのです。
凶悪な犯罪が横行している都市、東京。警察組織だけではその安全を守りきれないと判断した都は、善良な市民を厳選し、麻酔銃を託して治安維持に一役買ってもらうために「市民ポリス」制度を始動。主人公、芳一がその一員に任命された事から、秘密組織の陰謀が動き出す。
酒井敏也、つぶやきシロー、錦野旦。このキャスト陣を並べただけでも、観賞に挑もうとする私達の力が「す~っ」と抜けていくようだ。そんな脱力感全開に全編、メッセージ性、社会性を無視した破廉恥コメディ空間が展開されていく。
平凡であることの悲しさ、空しさ、そして微かな幸せをユーモアに包み込んで提示するという表向きのパッケージはあるのだが、思わず涙腺が緩んでしまう感動の殉職であったり、艶めかしいラブシーンなんかを期待して本作と向き合うのは、大きな間違いだ。「・・・バッカだねえ」と、夜中に一人でオホホと笑い飛ばすための物語だけがここにある。
その中でも終盤、大富豪の家で繰り広げられる対決の描写は真夜中、窓を開けて観賞してはいけない。多くは語れないが壮絶に馬鹿馬鹿しい、健やかな大笑い必至、まさに日本映画史に輝くであろう銃撃戦が繰り広げられる。「日本バカデミー映画賞」堂々の受賞である。笑って、笑って、早見嬢にうっとりして、笑って・・そんな心の清涼剤として活用していただきたい、爽快感に溢れた大馬鹿自堕落映画である。
ここにいくら書いても、その味わいは表現しきれないのかもしれない。とにかく、ポップコーンとコーラ片手に気持ちをスカッとリセットしたい貴方、観るべし、である。