劇場公開日 2011年5月14日

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「してみたいかも、地獄へダイブ」大木家のたのしい旅行 新婚地獄篇 ダックス奮闘{ふんとう}さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0してみたいかも、地獄へダイブ

2011年7月11日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

興奮

「GSワンダーランド」などの作品で知られる本田隆一監督が、竹野内豊、水川あさみを主演に迎えて描く、コメディ作品。

竹野内、水川。この正統派ともいえる美男美女トップを突きつけられ、爽やかに美しいラブコメディを想定して観賞に向かおうとしている皆様。ちょいとお待ちを。そのような気持ちで本作に向き合うと、冒頭から張り手を食らわされるような衝撃にぶち当たる事になるだろう。

確かに、大画面で堂々と暴れまわる主演二人は問答無用に格好良く、美しい。しかし、本作の場合は「ラブストーリー」としての表向きの顔とは別に、気色悪くも意味不明、何を目的にぶち込んだのか分からない妄想要素が炸裂する「カルト映画」としての裏の顔が存在する事を忘れてはいけない。

ふわふわと空を切る主演二人のやる気の無い身のこなし、会話のちぐはぐ感は、即興的に構築される舞台芸術の雰囲気が色濃い原作を忠実に踏襲したことから来るのだろう。

しかし、敢えて竹野内、水川という一般的に舞台芸術の印象が薄い俳優陣を前面に押し出した事で、ごちゃまぜ変態世界にあって成すすべも無く流されていく哀しくも可笑しい夫婦の有り様がやけに現実味溢れ、魅力的に観客を掴んでいく。その適当なやりとりに思わず、顔もほころぶ。

冒頭、地獄旅行に向かうまでに展開される、呆れる程に長く、息苦しいくだりに若干心が萎えるのは否めない。それでも、一旦この脱力世界に入り込めばジェットコースターの如くなだれ込む違和感物語にも心は落ち着き、気付けば荒んだ気持ちも温かく。何とも不思議な効用が嬉しい作品である。

ちなみに、人気を博したドラマ「マルモのおきて」に出演していた子役、鈴木福君もちらりと本作を彩っているようである。注意しないと全く分からないので、お見逃しなきように。何せ、顔が真っ青ですのでね。

ダックス奮闘{ふんとう}