「ママゴトだからこそ放っておけない2人の愛」軽蔑 全竜さんの映画レビュー(感想・評価)
ママゴトだからこそ放っておけない2人の愛
覚悟の高飛び云うても故郷に帰り、親父のマンションに転がり込むすねかじりの目論みやから、そんな愛、たかが知れている。
踊り娘とヒモの恋ゆえに当然、周囲は冷ややかで、満たされない欲求から地元でもまた博打にのめり込む。
程なくして、たちまち借金まみれ。
大森南朋演ずる高利貸しの親分に引きずり回されるハメとなる。
東京での失敗が一切、教訓になっていない愚行の代償はあまりにも大きく、仕事も妻も、そして、親や友人まで犠牲となってしまう。
誰もが祝福を拒みたくなる彼の愛欲は、破滅的であり、利己的でもあり、同情する余地は微塵も無い。
両親から「二度と敷居を跨ぐな」と勘当されるのは当然である。
結婚ってぇのは名ばかりで、所詮、ママゴトに過ぎない。
しかし、2人の迷走を絶えず放っておけない眼で観てしまった。
後先考えずに転がり落ちても、なお愛撫し続ける男女に対する若さへの憧れにも似た嫉妬心が我が胸を小突いたからだろう。
今作では鈴木杏と高良健吾が一糸纏わぬ大胆なベッドシーンが話題となった。
彼女の、存在感あるフェイスに反して小ぶりな乳房と可愛らしい腰回りが男性本能をそそる濃厚な絡み合いをキケンに奏で、想わず息を呑む。
妖艶な色気に咽せる一方、どこか純真無垢なあどけなさを漂わせる小悪魔のような裸体が印象深い。
未完成な身体による未完成な情事は、時として醜く、時として美しい。
2人の恋なぞ、如何にガキっぽく、成就しない関係であるかを象徴している気がして、切なさが後味を残す。
二日酔いの朝に呑み干す赤ワインとよく似ている。
路地裏の酒場でクダを巻き、ママさんに慰めてもらいたい夏の帰路であった。
では、最後に短歌を一首
『夜走る 裸足の男女(ふたり) 濡れる路地 椿焦がして 雨かぶる恋』
by全竜