劇場公開日 2010年12月18日

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「お正月に見る娯楽映画としては、これが一番面白い作品として、イチオシしておきます」7級公務員 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0お正月に見る娯楽映画としては、これが一番面白い作品として、イチオシしておきます

2010年12月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 お正月に見る娯楽映画としては、これが一番面白い作品として、イチオシしておきます。それくらい、ラブコメとアクションがぎっしり詰まって、全編飽きさせない作品でした。
 『7級公務員』ときは聞き慣れない名称ですが、韓国では国家情報院のことを指す言葉として広く定着しているようです。スパイがらみのラブコメとしては、『キス&キル』が公開中ですが、こちらは両方がスパイだったというオチ。それにしても、同じ国家情報院所属なのに、国内産業保安チームと外事チームで全然交流がないものなのでしょうか。
 人事交流がないばかりに、スジとジェジュンのお互い嘘の肩書きを伝え、職業柄ついつい相手の身元が分かるにつれて、不信感をもって別れてしまった悲しい宿命を背負って、互いにスパイ稼業に精を出していたのでした。

 ふたりが別れて3年後、スジと産業保安チームは、細菌ウィルスを流出させようとしている研究者を追い、外事チームは、ロシアから帰国したジェジュンの情報を元に、ロシアの外交官に化けたマフィアを追い掛けます。二つのチームの観察対象者(向こうの用語で1級状態に入るというようです。)が繋がったため、現場に潜入していたスジとジェジュンの双方が、それぞれのチームから重要関係者として、マークされてしまうところが、本作の可笑しさのツボでしょうね。
 それとスジが嘘がバレそうなときや、まともに答えにくい事態のとき、思いつきで話す日本語の単語を並べて相手をケムに巻くところ可笑しかったです。

 とにかく双方の嘘がバレてケンカ別れ状態していたのに、双方のチームからの命令で、とにかくあって、盗聴器を仕掛けることが厳命されたから、さあ大変!
 顔を合わせているだけでもイラつくのに、何とか抱擁した隙を見計らって、相手の着衣に盗聴器を仕掛けなくてはいけません。再開したふたりのぎこちない態度、けんか腰の台詞なのに何とか抱き合うきっかけを作ろうと、身を乗り出してみたり、急に褒めちぎり出したり、ふたりのボケぶりに大笑いしてしまいました。

 スジはスパイとしては、優等生。どんなことでもそつなくこなしてしまいます。だから、ちょっと気が強く男を見下しているタイプなんですね。
 その点、ジェジュンは秀才タイプながら、気が弱く、プレッシャーにいつもドジってばかりのスパイとしては落第生。上司の課長が包容力があるタイプだったから、何とか首が繋がっていたようなもの。
 そんなスジとジェジュンの凹凸コンビは、やっぱり韓流ラブコメの王道をいく設定ではないかと思います。

 仕事では優秀なスジでしたが、男を見る目はありません。ジェジュンに振られて、次に出会った男もやはり国家情報院所属の「同僚」だったのです。お前スパイのくせに、男の嘘を見抜けないのかと言いたいのですが、男の前ではどうも疑うことを忘れてしまって、舞い上がっちゃうのですね。

 こんな風に紹介してしまうとおちゃらけたコメディ映画を連想されることでしょう。しかし本作は、『キス&キル』にアクションでも負けません。お互いの監視対象を追い詰めるクライマックスでは、激しいアクションを見せつけてくれます。飛び、跳ねるキム・ハヌルの体当たりの演技は、なかなかの迫力がありました。

 そして、最後のボスキャラとの対決では、さすがにスジひとりではピンチに陥ります。そこでふたりが思い出したのが、スジとジェジュンが恋人同士だった頃、一緒になって腕を磨いたフェンシングのタブルスの業。息もぴったりで、相手を追い詰めていくアクションに、ラブラブでフェンシングをしていた頃の映像を重ねることで、ふたりの愛が蘇るなんて、なかなか憎い演出です。

 これで相思相愛のスパイカップルが誕生することになりました。そのカップルでの活躍がエンドロールで披露されます。お互い協力し合えば、さぞかし能力発揮かと言えば、前にも増して、可笑しさの方が倍増になっていました。本編よりも可笑しいエンドロールにぜひご注目ください。

流山の小地蔵