「気高く、輝く」デザートフラワー ダックス奮闘{ふんとう}さんの映画レビュー(感想・評価)
気高く、輝く
アフリカの遊牧民出身から、世界に名を轟かせるトップファッションモデルにまで上り詰めた「現代を生きるシンデレラ」、ワリス・ディリーの波乱に満ちた半生を、自身の監修のもとに丁寧に紡ぎ上げた作品。
物語を語る上で目立ってしまう演出の稚拙さ、そして余りに劇的に描かれていく主人公、ワリスの華麗なる転身の描き方は、伝記映画に少なからずつきまとう遠慮と敬意の、バランスの困難さ、そして、本人監修から生まれる若干の演出過剰からくるものであり、ここは目を瞑らざるを得ない。では、この作品は駄作か?いや、違う。その絶対的な欠点を補うに値する魅力が端々から溢れ出す。それは、本作でワリス役を演じたリヤ・ケベデ自身の逞しい成長である。
冷静に、冷徹に現実を見つめ、それでも前に、柔軟に、困難を乗り越えていく主人公を演じる中で、リア自身の純粋無垢な心、肢体は、役柄を超え、演出を超え、輝きを増していく。これは、演技なのか?彼女の持つ資質か?違う、成長である。可能性である。こんな喜びがあっていいのか。こんな自由な幸福があっていいのか。
ワリス・ディリーの華麗なるシンデレラストーリーと、逆境を力強く跳ね返していく物語と共に、演じた女優の健やかな成長物語を盛り込んだ贅沢な一本。
リア・ケベデ。映画を超え、虚構を超え、もっと気高く、輝け。その場限りの満足感を越えた未来への希望が、物語に満ちる。
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