「荒削り、かつ、光り輝く可能性」シークレット(2010) ダックス奮闘{ふんとう}さんの映画レビュー(感想・評価)
荒削り、かつ、光り輝く可能性
精緻に、確信を持って、この佳作は作り上げられたといえる端正な魅力が
端々から溢れ出している。今、サスペンス映画で何を見るべきか。これだ。これで、いいはずだ。
物議と賞賛を掻っ攫った韓国サスペンス大作「チェイサー」の脚本家が満を持して送り出す本作「シークレット」は、前者が観る者を心的に追い詰めていく「静」の作品だとするならば、身体の躍動とむさ苦しいまでの衝突で観客を引っ張り込む「動」の作品に位置づけられる。
随所に散りばめられた伏線をスピード感溢れる展開を維持しながらも確実に回収し、飽きのこないストーリーに仕上げることに成功している。
端正なルックスの夫婦を配置し、婦人層を確実に呼び込むマーケティングの確かさ。そこに裏打ちされた暴力と妖艶さの絶妙な構成力。短いショットの積み重ねから作りこまれる緊張感。サスペンスの王道を踏襲しつつ、意欲的に実験的要素をもって挑戦していく、これぞ、これぞ、勢いを増し続ける韓国サスペンス界の可能性を伝える、大いに頼もしさを感じさせてくれる一品だ。
難点としては、その伏線の張り方にあり、勢いのままに付けて、付けて、加えてしまって最後に回収しきれなかった印象は否めない。しかし、それにも増して余りある原石の眩しい輝き。
さあ、サスペンス、何を見ようか。答えは、ここにある。
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