「大量破壊兵器なんて、元々無いんですよ。」グリーン・ゾーン 勝手な評論家さんの映画レビュー(感想・評価)
大量破壊兵器なんて、元々無いんですよ。
2003年3月19日に米軍を始めとした有志連合がイラクに攻撃を始める『証拠』である『大量破壊兵器』。探せば探すほど、その存在に疑問が生じてくる『大量破壊兵器』の謎に、マット・デイモン演じるロイ・ミラーが命を掛けて迫ります。
いまとなっては『大量破壊兵器』なるモノは、始めから存在しなかったのは明らかになっていますが、この作品の設定年代の頃は、全世界がその発見は今や遅しと待っていた頃ですね。この映画に描かれている事はフィクションですが、アメリカ国防総省(以下DoD)とCIAの確執が、この作品で描かれるように本当にあったのかは不明ですが、どちらもお役所ですから、少なからず何らかの衝突は有ったのでしょうね。
タイトルのグリーン・ゾーンとは、イラクの首都バグダッドの中心部に設定された地域で、連合国暫定当局(CPA)や米国系企業の拠点などが置かれた地域の事。正式には、インターナショナル・ゾーンと言うそうです。また、このグリーン・ゾーンと言うのは、この地域以外のことをレッド・ゾーンと呼ぶことから、その対比として呼ばれていた名称で、グリーンと言う事から安全地帯と思いがちですが、そう言う意味はないそうです。
主人公ロイ・ミラーを演じているのはマット・デイモン。ボーンシリーズ以降、すっかりこう言うマッチョな役が多い彼ですが、今回も、中々いい演技しています。ところで、劇中ミラーは「チーフ」と呼ばれていて、その日本語訳が「隊長」となっているんですが、これは間違いでな無いですかね? と言うのも、ミラーの階級は上級准尉なんですが、これがChief Warrant Officerと呼ばれる階級なんですよね。Chief Warrant Officer自体もCW2の2等准尉からCW5の5等准尉までありますが、階級章が良く見えなかったので、CW2~CW5のどれかはわからなかったです。まぁ、何れにしても、そのChief Warrant Officerのチーフではないかと思います。
これは、アメリカの批評家達には「反米的である」と不評らしいです。まぁ、ミラーの行為をそのまま見てしまうと、そう見えるかもしれません。でも、政治的に描かれるな上級幹部(って言うか、この劇中ではパウンドストーンの事ですが)を見れば見るほど、そして、政治的な上級幹部の命令に従って命をかけている兵士達の働きを見れば見るほど、この作品って、その末端の兵士達に捧げるという意味もあるのではないかと思いました。違いますかね? あ、とは言っても、実際にミラーの様な行為をしたら、軍法会議モノではないかと思います。
この映画に描かれているミラーの行為の有無は不明ですが、それを横においても、アクション映画としては、中々、面白いとは思います。欲をいえば、謎を暴こうとするミラーが、軍人ではなくジャーナリストの方が、もっとそれっぽい気がします。
映画の最後の方のシーンは、いまに至るイラクの混乱を暗示するシーンになっています。