「トラボルタのガンアクションがイカしている!でも、もう少し山場の葛藤を盛り上げて欲しかったです。」パリより愛をこめて 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
トラボルタのガンアクションがイカしている!でも、もう少し山場の葛藤を盛り上げて欲しかったです。
「96時間」で好評を博したベッソンプロデュース+モレル監督のコンビによるアクション作品。婚約者のキャロリンと対峙せざるを得なくなった新米諜報員リースの愛を取るか、ミッションを取るかというギリギリの選択が見せ場になっています。
ただ、キャロリンが中盤、リースがスパイ活動中にあり得ない場所で鉢合せになるところから、だいたいオチが見えてしまうのです。ちょっとガッカリ。
それとベッソンとヨーロッパコープの作品は、SFの『アーサーとミニモイ』シリーズを含めて、ラブストーリーは、いまいち泣かせる要素が苦手なんですね。本作でも、前半にくどいくらいスイートな関係を見せつけてくれます。もう少し山場で、リースの葛藤を盛り上げても良かったのではないかと思いました。
けれども、そこはヨーロッパコープブランド。アクションは見せてくれます。最初こそリースのスパイ登用のためのしょぼい任務ばかり続いて、な~んだこの作品!と憤慨させられます。ところが相棒のワックスが登場してから、突然ボルテージが急上昇。
麻薬の売人を締め上げて、アジトに潜入したら、問答無用にバッタバッタとワックスはなぎ倒していきます。このおっさん御年50歳のトラボルタが演じているとは思えないほどの、身体の切れ具合が抜群!ひとりであっという間に大勢の麻薬シンジケートを倒してしまうガンアクションは圧巻です。
そればかりか、後半はアクションのオンパレード。屋根伝いに敵を追いかけるパルクールや接近戦、そしてヨーロッパコープ作品に欠かせないカーアクションなど見せ場がかなりありました。
圧巻は、テロリストが乗車した車に、ワックスが車上からロケットランチャー発射するところ。間一髪で、爆弾テロを食い止めるシーンは迫力満天でした。
このワックスという人物は、凄くユニークなキャラ。全てがオレ流で人間臭いのです。法律なんて無視もいいところで、その猪突猛進ぶりは、さすがに『24』のバウアー捜査官も敵わないでしょう。やっていることはむちゃくちゃでも、しっかり計算されているところが凄いのです。一見自分がコカインを吸いたいために、麻薬組織を襲っているかのように見せるのだけけれど、手に入れたコカインでしっかりテロ組織の足取りを突き詰めていくわけですね。
そんなワックスに振り回されるリースは大変。いきなり修羅場に引き回されて、人を殺すのが嫌だったリースは、この仕事はオレに向いていないかもと自信をなくします。そんなリースに悩む暇を与えないほど、次々にワックスは敵襲仕掛けます。
そんなワックスだから、テロリストの仕掛けたおとりテロに見事に引っかかってしまうのですね。そんなおとりテロをおとりと見抜いて対処するリースの頭脳プレーが、テロの危機を回避することに繋がりました。
スパイとして自信を失い、仕事を通じて、婚約者の愛も失った孤独なリースに、ワックスは親愛をこめて、「相棒」と話しかけます。当局がなんと言おうが、今回のミッションを通じて、ワックスにとってリースは欠かせないパートナーになっていたのでした。
男ふたりのウイットに満ちた関係は、フランス映画由来のものでしょうね。
リース役のジョナサン・リース=マイヤーズは、かなりのイケメン。婚約者とのラブシーンでは、いい表情を見せたので、ラブストーリーに向いているかも知れません。ピエール監督は、もう少し彼の哀愁に満ちたいい表情を引き出せる見せ場を作った方が、タイトルらしい雰囲気を作れたのではないかと思えました。
トラボルタ好きやアクション映画がお好きな人には、お勧めします。