「先が見えてしまうので片目をつぶる必要はあり。でも“ベスト・オブ・ジャッキー”と言うべき30周年記念作品です。」ダブル・ミッション 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
先が見えてしまうので片目をつぶる必要はあり。でも“ベスト・オブ・ジャッキー”と言うべき30周年記念作品です。
ハリウッド進出30周年として、まさに原点回帰したかのような典型的なアクション・コメディです。
主人公ボブ・ホウの活躍を紹介するオープニング映像は『プロジェクト・イーグル』『ラッシュアワー』『ラッシュアワー2』『タキシード』からの引用。ファンをニヤリとさせる、この冒頭だけでも本作が“ベスト・オブ・ジャッキー”と言うべき作品であることがわかります。随所にこれまでの出演作を彷彿させるアクションに溢れていました。
その「ジャッキー・スタイル」は徹底されており、カンフーをベースにしつつ手近にあるものを武器として利用する、ユーモラスでスピーディーな格闘アクションは、本作でも健在でした。
だからやっぱりお楽しみは、エンディングのNGシーンですね。今回も大笑いのNGシーンを魅せてくれました。いかにCG抜きでアクションに体当たりをしたのだというのがよく分かるNGシーンばかりでした。
御年58歳でしたっけ、もうすぐ還暦を迎えるというのに、全然若い頃と変わらない動きを見るとジャッキーのファンの人ならついつい嬉しくなってしまうでしょう。
アクションの見せ場は数あれど、ストーリーはスリル感を求めるムキには不向きです。何と言っても、主人公ボブが、幸福な結婚を選択して、スパイ業からの引退を決意するというのが基本線なので、どことなくホームドラマタッチ。家族となる婚約者ジリアンとその連れ子を守るんだというボブの悲壮な決意と、ダサいボブとの結婚に反対して、父親とは認めない子供たちとのたどり着く家族愛が軸に据えられているのですね。
スパイとしての正体を明かせば、子供たちの興味を引くのはたやすいことです。しかし秘守義務があって明かすことができないジレンマ。サエえない表の顔と、切れる裏の顔、そんな二面性を持つスパイにユーモアと好感を抱かせるのは、まさにジャッキーの個性がなせる演技ゆえんです。
そんな正体を隠したまま、ジリアンから留守番を頼まれたボブは、子供たちとふれあうチャンスとばかりに、張りきって引き受けます。しかし結婚に不満を持つ子供たちの子守は一筋ならでは行かず、随所に笑わせてくれるシーンが登場しました。
なかでも笑えたのは、言うこと聞かない子供たちを管理するため、様々なスパイ・グッズを駆使して自己流で子供たちを監視下に置くことです。また一番幼い末娘の着せ替えを、空中で放り投げて、スポット一発で服で掬って着替えさせるアクロバットなシーンが笑えました。あれはどう見てもCGでしょうね。
そして一度スパイに関わると、引退してもいろいろしがらみに追われるものです。ひょんな事から、ロシアマフィアにジリアンの家がマークされて、襲われる事態に遭遇します。そこからスパイだった事実を家族にひた隠しながら、ボブの涙ぐましい戦いが始まります。
長男イアンもマフィア相手に戦うところは、ちょっと『ホーム・アローン』タッチでした。
戦うなかで少しずつ彼らと心を通わせてゆくところ。例えばジリアンが継母であるという長女ファロンの孤独や、学校で嘘つき呼ばわりされるイアンの疎外感を知って、ボブが心を寄せていくところは、なかなかむヒューマンタッチでした。
アクションよりも、ボブが子供たちにとってかけがえのない存在となっていく展開が、本作のメインとなっているウリの部分で、これはなかなかホロリとせてくれますよ。
スパイである正体が、ついにばれたとき、果たして子供たちに、無事パパと呼んでくれるのか?チョットいいラストシーンをご期待ください。
ただストーリー的には、先が見えてしまうので片目をつぶる必要はあり。ジャッキーを楽しむ作品ですね。