劇場公開日 2011年2月25日

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「単なるラブコメではなく、意外と仕事と恋の両立を深く考えさせられる作品。ハリソン・フォードのベテランの味が光る。」恋とニュースのつくり方 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0単なるラブコメではなく、意外と仕事と恋の両立を深く考えさせられる作品。ハリソン・フォードのベテランの味が光る。

2011年2月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 仕事に、恋に、キャリアウーマンの自覚がなくても、仕事にやりがいを見いだしているあなたや、共稼ぎの奥さんなら、何とか両方頑張ろうともがくもの。なんていったって、今の時代に待っていたって、幸運なんて来やしないもんね。特に、成果を出して昇進したり、キャリアアップして、憧れの仕事にとらばーゆできた人ならなおさらですね。女の一本道で、前進あるのみ!と突っ込んでいくのはかっこいいけれど、次の局面ではその成功ゆえに、器がついていけばいいのだけれど、追いついていけないとトンだピンチを招きます。
 あ~どうしょうって悩んで、やけ食いで太るくらいなら、その前にこの映画を見てください。あ~彼女もワタシと同じだぁとゲラゲラ笑ってみているうちに、きっと引き込まれて、ほどほどにガンバロ~というか、たまには彼氏のこともかまってあげなくちゃって、彼氏とのラブラブな関係を取り戻せる秘訣を教えてくれる映画なんです。

 本作の主人公のベッキーも、ワーキング・ウーマンとして誰もが羨ましいと思う仕事を掴みます。一端はリストラにあうものの、持ち前の頑張りで全国ネットのテレビ局のプロデューサー職を射止めてしまうのですね。たとえそれが超低視聴率に喘ぐ朝の情報番組でも前職のローカル局のそれと比べればビッグチャンスでした。さらに幸運は続きます。自分が業界に入るきっかけとなった憧れのキャスターのマイクを、グッドタイミングで招聘に成功。それが局中の注目を集めるばかりか、マイクの担当していた報道番組の先輩プロデューサーで、イケメンとして局中の女性職員の憧れだったアダムのハートまで射止めてしまうのですね。

 しかしマイクは、地味に報道原稿を読み上げるだけで、ロケ先のレポーターにも一切絡まなず、愛想のない顔を画面にさらすだけ。まぁ何と言っても、このマイク役は、ハリソン・フォードが年期の入った偏屈ぶりを発揮。誰が見たって、これじゃあ絶対に視聴率が上がるわけがないテンションの低さだったのです。おまけに、ペアを組むお局キャスターとは、プライドとプライドがぶつかり合って、手に負えない状況になってしまいます。

 そんなていたらくで、視聴率はさらに下がり、ベッキーは上司の報道部門長のジェリーから、6週間後の番組の打ち切りと、解雇予告を受けてしまいます。このように紹介すると、根暗な感じがしますが、実は生放送中のあり得ないミスのずっこけかたがコミカルに描かれていて、大爆笑シーンのオンパレードなんです。ちょっとテレビ番組の舞台裏がのぞけてしまう作品でした。

 一方アダムとの恋も、せわしいのひと言。何と言っても、朝の番組を担当しているベッキーの出勤は早朝のam2時なんです。仕事時間が違うアダムとは、ゆっくりセックスもしていられません。アダムの家に飛び込むと、挨拶抜きでベッドイン。でも携帯が鳴ってしまうと、携帯を片手に通話しながら、下着姿のまんまで部屋の中をうろうろというのが日常化していきました。
 これでは色気もへったくりもありません。次第に、アダムり表情が曇っていくのが見ていてとても気になったのです。でもベッキーは、仕事のことで頭がいっぱいで、全然気がつきません。そして会話のなかでも、デート中なのに仕事の話ばかりになってしまうのです。何となく、男女の立場が逆転しているような関係ですね。

 さて、ここで挫けないのがベッキーの凄いところ。報道にこだわるマイクをシカトして、バラエティ路線を導入。『電波少年』やリアル芸人のお株を奪う、突撃レポートを敢行して好評を博します。意外と突撃ルポが好きだというコリーンの豹変ぶりが笑えます。
 しかし、マイクはビシッと各社ぶっちぎりのスクープを自らレポートして、ベッキーに報道魂を見せつけます。やるときはやれる男。ハリソンが渋かったぁ!

 このスクープでマイクを見直したことで、ベッキーとマイクが初めて打ち解けて話し合えるようになるのです。そしてマイクはこう告白するのです。君を見ていて、いかに自分が家族を犠牲にしてきたか、反省したよと。しみじみ語るマイクの表情には、これまでの偏屈さが微塵にもなくなっていました。ハリソンの台詞が、心に染みてくる感動的なシーンでした。
 もちろんマイクの言葉は、ワーカホリックになっていたベッキーも、アダムとの関係を見つめ直す転機をもたらしました。ただこのあと二人の関係が改善されていくシーンが省略されて、一気に関係が良くなってしまうのは不満です。ラブストーリーとしては大事なところなんで、もっと丁寧に表現して欲しかったですね。

 しかし一筋ならではでないのが、マイクの偏屈さ。この間の反省の弁はどこへやら。また元の木阿弥に戻ってしまっているではありませんか。腹を立てたベッキーは、一度は断った裏番組で視聴率トップのNBCからの引き抜きに応じる決心をして、面接に向かいます。ベッキーが番組を降りて面接に向かったことを知った、マイクは番組のなかで想像を超えるパフォーマンスを披露し、ベッキーに戻って欲しいことをテレビ画面を通じて、暗示するのです。NBCのモニターで、マイクのパフォーマンスに気がついたベッキーは果たしてどんな決断を下したか。ちょっと感動させてくれるラストシーンにご期待ください。
 レイチェル・マクアダムスは、はっちゃきになってチャレンジしていくベッキーを好演しています。それ、あるよねぇというドジぶり。そして等身大の背伸びしない演技に、思わず感情移入して、自分が劇中で頑張っちゃう感覚で楽しめることでしょう。

流山の小地蔵